アミのひとり言

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婚外子差別判決-最高裁の心変わり

最高裁大法廷は平成25.9.4決定により、従来合憲としていた非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条の規定を、憲法違反とした。1995年(平成7年)判決では合憲としていたものが、18年後に同じ最高裁が同じ案件で違憲にしたのはなぜか。しかも原告が最初に訴えを起こした2001年の時点で違憲状態であったと認めたのだから、6年で結論をひっくり返して「法的安定性」を云々する権利があるだろうか。

6年間に、国民の婚姻,家族の形態が著しく多様化したこと、婚姻や家族の在り方に対する国民の意識が変化したこと、そしてなによりも諸外国の状況も変化したことなどを挙げている。現在,我が国以外で嫡出子と非嫡出子の相続分に差異を設けている国は,欧米諸国にはない。韓国も中国も婚外子の相続分を平等にしている。1995年合憲判決を出した時、欧米主要国ではドイツとフランスだけが婚外子の相続分を差別していた。しかし、1998年ドイツ,2001年フランスで差別が撤廃されたため、諸外国の状況が著しく変化したとなったようだ。しかし、なぜ独仏の決定に依存せずに日本の最高裁は独自の判断ができないのだろう。

我が国は1994年「児童の権利に関する条約」(国連の「児童の権利委員会」)を批准している。この条約には,児童が出生によっていかなる差別も受けない旨の規定が設けられている。国連の自由権規約委員会は,同条約批准国である日本に対し、差別的規定の削除をこれまでに計10回勧告してきた。その結果、住民票では嫡出子・非嫡出子を区別せず一律に「子」と記載するようになり、戸籍上も非嫡出子は嫡出子と同様に「長男(長女)」等と記載することになった。また、非嫡出子の日本国籍の取得についても国籍法の障害を取り除いた。唯一相続分だけが差別を続けていた。

個人の尊厳を定める憲法24条と法の下の平等を定める憲法14条(全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない)に照らし,非嫡出子の相続分を嫡出子の半分にするという民法は明らかに憲法違反である。生れてくる子は「非嫡出子」として生まれることを選択した訳ではない。子自らが選択や修正する余地のない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されるべきではなく、子を個人として尊重していない。最高裁判決は2001年の時点で非嫡出子の相続分を区別する合理的根拠は失われていたと認めたが、1995年の判決時点ではその合理的根拠は存在したと言っていた。2001年の時点で違憲状態であったと認めるのになぜ12年後の2013年までモノを言わなかったのか。法律を改正するのは国会議員の仕事だから、民法改正をしなかった国会議員の思慮が足りないと認めているようなものでもある。

合理的理由のない非嫡出子相続分差別問題が片付いたら、次は夫婦別姓同性婚問題だ。外堀は徐々に固められつつある。アイヌ差別をやめたように、少数派の人間の差別をやめる時代はいずれ必ず来るだろう。

*ちぐはぐな最高裁裁判官たち
平成25.9.4決定から3週間後に出した最高裁判決(最判平25.9.26)は、自ら認めてきた非嫡出子差別を何ら反省していないということを暴露している。出生届けに「法律上の夫婦の子ども」か、「婚外子」かを記載するよう義務付ける法律の規定は憲法違反だと訴えていた裁判で、最高裁は規定は合憲と判断した。建前は法律婚で、子どもが生まれる前に籍を入れるのが一般的だが、人にはそれぞれ特殊な事情があり、中には籍を入れることができない人もいるという、人間の多様性を理解できない人ばかりが裁判官になっているとしか思えない。出生届の婚外子規定は事務処理を助けるもので、婚外子を不利に扱うものではないと最高裁は説明するが、財産が絡まないから子どもにとり不利にはならないと単純に考える人に、我が国の最高権力の判断を任せておいていいのだろうか。自分が「婚外子」扱いされて、気にもしないと断言できる人はどれだけいるだろう。幸いに法務省は、民法婚外子差別条項改正と同時に、戸籍法の出生届の規定も改正する方向で検討しているそうだ。