アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

スペインの公証探偵

スペインで探偵に助けられた裁判を思い出す。2-3年よく仕事をしてくれた女性社員Lauraが、ある時から病気になり会社に来なくなった。2週間ごとに医者の「自宅で絶対安静」という証明書だけを送り届けてくる。毎回病気が変わり、証明書を発行する医者も時々変わって3-4ヶ月経った頃、仮病に違いないから解雇する方法ないか検討することになった。スペインでは従業員は簡単に解雇できず、特に病気療養中の場合は尚更だ。でも、仮病を証明するのは悪魔の証明ほど難しい。彼女が、会社が終わってから学校に行って心理学を勉強しているという話を同僚が聞いていた。それは彼女の夫が経営している会社で従業員を採用するのに役に立つからだということであった。

ある朝、会社で新聞を見ていた社員がLauraの夫の会社が販売員募集という広告を見つけた。早速弁護士に相談したところ、探偵に応募させてはどうかというideaが出た。依頼した公証探偵が、その会社に応募したところ、面接の日が通知され、探偵は腕時計の姿の録音機を腕にしてLauraの写真も持って面接に行った。案の定、面接員は他でもないLauraであった。この時も彼女は自宅で絶対安静という医者の証明書を会社に提出していたから、夫の会社で面接をするなんてことはあり得ないはずだった。

探偵は運よく採用されて3日間の研修を受けに来るように言われ、その販売員の研修をするのは面接をしたLaura本人であると確認した。日本にはないが、スペインには、裁判で証拠並みに扱われる公証探偵がいて、公証人ほどに信頼される国家資格を持っている。彼らは資格剥奪の危険を侵してまで偽の証言はしないから、裁判官に100%信頼される。この女性社員を解雇しようとして会社が裁判を起こしたところ、彼女は「本当に病気療養中で絶対安静にしている必要があるから出社できないのだ」と代理人を送って反論したので、公証探偵に登場してもらった。録音したテープも裁判所に提出し、彼女に3日間の研修も受けることになっていたと探偵が証言してくれたので、やっと正式解雇することができ、通常払う6ヶ月の給料相当の手切れ金も不要となった(その分は弁護士と探偵に払ったがこれは納得がいく)。

あの時、社員が偶然新聞広告を見つけなかったら、Lauraが心理学を勉強に学校に行っているという情報を持っていなかったら、その心理学が社員の面接に役立つという話を聞いていなかったら、こうも順調に手切れ金なしに解雇できなかったに違いない。弁護士からも仮病の証明は非常に難しいと聞かされていたから、我々は探偵のおかげで大いに助かった。数年前、奈良の市役所にもっとひどい5年も仮病を使っていた職員がいて、市民の税金の無駄遣いが問題になったことがある。わが国にも公証探偵の制度があったら有効なのではないか。逗子ストーカー殺人事件被害者の住所を違法に調べた東京の探偵が捕まったが、スペインの公証探偵は絶対にこのような犯罪的行為はしない。公証探偵は、我が国が検討すべき数少ないスペインの制度と思われる。