金正日の後継者・金正恩が27-28才で即位して早2年、この若造の肩書は第一書記だ。北朝鮮の地下資源を食い物にしている中国には、こんな若い指導者は一人もいないから、中国の対話の相手にされない。そこで、この若造の成年後見人に父・金正日から指名されたのが張成沢（チャン・ソンテク、67才）。1972年に金正日の妹・金ギョンヒ（敬姫or慶喜）と結婚、金正恩の叔父である。中国の北朝鮮との交渉相手は張成沢だった。
ところが、12日、金正恩は、叔父である張成沢に、国家転覆の陰謀行為を企てた罪で死刑宣告し、即日機関銃で銃殺した。死体は北朝鮮に埋める価値もないので火炎放射機も使ったという。金正恩の叔母・金ギョンヒには、死刑執行の直前に張成沢と離婚させ、「親族」を処刑したのではなく、一人の「国賊」を葬り去った形にしたそうだ。もともと、叔母・金ギョンヒはアル中で病気といわれており、夫とは別居中だったらしい。張成沢は、金正恩の後見人、第二の実力者として君臨していたので、国家の資金は派手に使い、複数の女性と関係も持っており、9日に国防副委員長を解任された理由の一つも「複数の女性との不適切な関係」と指摘されていた。当然、特別軍事裁判で死刑判決を下し、即日銃殺刑を執行するには、妻・金ギョンヒの同意を得てのことだろう。
金正恩はまだ29か30才の若造だ。金正男（42才）・金正哲（32才）の二人の兄もいる。自分に忠実でない実力者が、いずれかの兄を擁立して自分を追い出す事態を一番恐れているに違いない。張成沢もそんなことを企んでいたのかもしれないので、自分のいいなりにならない後見人は葬り去ろうということなのだろう。張成沢の派閥は北朝鮮政権内部の要所に配置されている。既に5人は11月末以降に処刑されたという。その中にはスイスの巨額秘密資金を管理していた李スヨン朝鮮労働党副部長（金正恩のスイス留学中の後見人だった人物）も含まれている。金王朝のスイス秘密口座には40億法別4,000億円）あるという。
親分である張成沢が要職を解任されたのをみて、重要機密書類・資金を持ちだし、中国に逃れ、第三国への亡命を求めた二人がいるという情報もある。張成沢一派の幹部が、全員北朝鮮で捕まって、死刑になるか強制収容所送りになるとは考えられないので、今回の事件を機に、一部の者は国外に出るだろう。そうすると、15万～20万人収容といわれる、悪名高い三世代強制収容所の実態も暴露され、ますます金正恩政権は、国際社会から人権抑圧の非難をされるだろう。既にこの強制収容所から脱走した人が英国で証言している。金正恩の前途は波乱万丈、張成沢一味を排除したからといって権力を確立したということにはならないだろう。
