アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

メキシコ人大富豪の慈善事業

Bill Gatesと総資産世界一二位を争うメキシコの実業家Carlos Slim Helú (73才)は、貧困層の多い中米メキシコ(人口1.2億人)で、どうして7兆円に上る資産を一代で築くことができたのだろうか。この大富豪一人の総資産$700億≒7兆円は、昨年の同国のGDP推計値US$1.3兆の5%を超える金額に相当する。わが国のGDPはざっと500兆円弱、日本にGDPの5%に相当する資産の大富豪がいたとすると、その額は25兆円になるが、日本一の大富豪・柳井正Uniqlo社長(Forbes世界第64位)の総資産は1兆4,400億円で、GDPの0.3%弱でしかない。

Carlos Slimは大学の工学部卒業後、自分で商売を始め、建設業、鉱業、飲食業等で蓄えた資金で、建機、不動産、印刷、小売業、タバコ等に手を広げ、新興財閥にのし上がる。1980年代のメキシコ経済危機に乗じて化学、保険、銀行等に事業を拡大、1990年、政府に働きかけて規制緩和を実現、国営電話事業Telmexを買い受け、その後携帯電話が普及し始めると、携帯電話事業会社Telcelを設立、更に中南米10カ国以上で事業展開する携帯電話会社América Móvilも傘下に収めて、通信の独占企業になる。Telmexの市場占有率は90%以上、Telcelの市場占有率は80%以上と、メキシコ国内ではほぼ独占だ。

2011年ForbesはCarlos Slimが文化・スポーツ・慈善事業などに寄付した$40億≒4,000億円が世界一の寄付額であると公表した。しかしこの財源は、世界一高い電話料金を押しつけているTelmexの不当利益から出ているものであり、Carlos Slimは影響力のある政治家に充分献金をして、慈善事業などにこれほどの寄付をしても、なお、それを大幅に上回る利益を出しているのだ。

メキシコの政治家も自分個人に献金してくれる方が、国家により多くの税金を納めてくれるよりありがたいから、このような億万長者をのさばらせている。人口の17%=2,000万人が貧困世帯(年間70万円以下で生活)といわれるメキシコで、この億万長者のやっていることは犯罪的だとの批判がある。だが、ここまで抜きん出てしまうと、何をやるのも自由自在らしい。自分の資産を少しでも減らすべく、3人の息子たちに持ち株を譲渡したりして、73才の実業家は自分が亡き後もSlim帝国がメキシコ経済をがっちり牛耳続けるのを見届けたいようだ。

世界最大の小売業Walmartの売上高は米国のGDPの3%ほど、Sam Waltonの4人の相続人の総資産額合計は米国のGDPの1%。これに対して、Carlos Slimの総資産はメキシコのGDPの5%
だから、いかにメキシコにおける富の偏在が極端であるかわかるというものだ。この大富豪は、慈善事業の前に、貧困層半減に向けた税制改革に取り組んでもらいたいものだ。