アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

一国二制度のまやかし

香港の民主化運動が本格化してきた。背景には、中国共産党政府が2017年に行う香港行政長官の選挙を「普通選挙」にすると約束しながら、親中派の選挙委員会が指名した候補者に限ると条件を付けた事情がある。実質的に、中国政府と対立する民主派の候補者が出馬できないように配慮したものだ。これが中国の「普通」選挙だと居直るのだから、中国共産党の常套手段と諦めるべきか。
 
1997年に英国から中国に変換された香港では、50年間は一国二制度を維持すると中国は香港の人民に宣伝して安心させ、同時に返還に応じた英国にも「将来的に行政長官は普通選挙で選ぶ」と約束した。行政長官はいわばCOO、その上に香港にはCEOがいて、このCEOは中国のCEOも兼ねる習近平だ。習近平と対立する者が香港の行政長官になると面倒なので、そんな奴は立候補させない。これが中国風「一国二制度」と「普通選挙」だ。
 
1980年代から1990年代初めにかけて小生の知り合いの香港人が結構香港を出て行ったが、彼らは初めから中国が約束するという「一国二制度」を鼻から信じていなかったので、カナダとかオーストラリアなどに移民したのだ。今から思えば先見の明があるというものだ。しかし、先月始まった今回の香港大規模抗議行動の中心は、その頃、まだ物ごころついていなかった若者とか、その後生まれた新人類だ。自分の意思で香港返還前に外国に移民に出る選択肢がなかった人たちだ。
 
先週、デモの最中に逮捕された民主化運動のリーダーJoshua Wong黄之鋒)は17才だから、香港の中国返還の年に生まれた新世代だ。彼がこの運動に入ったきっかけは2012年、香港政府が愛国主義教育の導入を計画した際、学生団体「学民思潮」(Scholarism」として、中国の洗脳に反対する抗議活動を始めたこと。結果的に香港政府は愛国主義教育導入を撤回することになった。
 
Joshua Wongのような若い世代にとって香港は自分達の祖国だ。いやなら他の国に行けばいいという程度の土地ではない。なんとか自分達の力で郷里をよくしたいと念じるから、命を賭けてでも理想的な祖国にしようとする。中国が汚職・腐敗・縁故主義に満ちた汚らわしい一党独裁の国であることを熟知して、自分達の祖国は、そのようなものと一体にしてはならぬという強い信念をもって行動している。
 
中国式「一国二制度」の実態を見た台湾は、香港の民主化運動を見て、易々と中国の甘言に乗ってはいけないとの教訓を得たであろう。普通選挙を約束してくれても、それはあくまでも「中国式」普通選挙でしかないのだから。