アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

エジソンより辛抱強い男

成功とは、意欲を失わずに失敗に次ぐ失敗を繰り返すことなのだエジソン白熱電球の発明に1000度も失敗した。後にインタビューで記者に「1000回失敗したという気持ちはどういうものですか」と尋ねられ、「1000度の失敗をしたわけではない、1000のステップを経て電球が発明されたのだ」と答えている。必ずできるという信念を持っていた人の発言だ。今年のノーベル物理学賞の受賞者中村修二氏(60才)は、失敗の数ではエジソンを上回る。青色LEDの開発では1,500回の失敗を乗り越えたという。
 
共同受賞者・赤崎勇氏の論文を頼りに、窒化ガリウム(GaN)に賭けた。当時、青色LEDを開発しようとしている者は大企業にもたくさんいて、セレン化亜鉛を使うのが常識とされていた、少なくとも、セレン化亜鉛が圧倒的に優勢だったという(もう一つの候補が炭化ケイ素)。赤崎勇氏くらいしか信じていないGaNに命をかけて、1,500回も失敗を重ねてようやくできた青色LEDの寿命を10時間持たすのに苦労した。更に苦労を重ねて1,000時間持たすことに成功した。今は4-6万時間持つ。そのころ米国大手3Mは、セレン化亜鉛青色LEDを開発したと発表した。しかし、寿命は10秒程度。軍配は赤崎勇・中村修二組に上がった。
 
日亜化学工業敷地内の掘立小屋を実験室にしていた中村氏は、実験が失敗して実験小屋が何度も爆発し、そのたびに手に傷を負ったという。元気で生きているのが不思議なくらいだとも。しかし、会社は「特許の出願にも金がかかる」と文句言い、発明の対価は報奨金2万円。社内で冷遇されていて活躍の場がないと悟った彼に、米国から10件以上のofferがあった。米国の大学に移った彼に日亜化学から「職務発明の秘密を漏らした」と訴訟を起こされた。彼は米国で勝訴を勝ち取ったが、今度は逆に日亜化学に対し正当な発明の対価を請求する訴訟を日本で起こした。
 
東京地判平16.1.30は、発明者中村氏の貢献度を604億円と判断、原告中村氏が訴訟で200憶円しか請求しなかったので、会社に200憶円払えと命令した。会社は控訴し、翌年和解が成立、中村氏は弁護士にも相談して約8憶円で決着した。彼のおかげで日亜化学の売り上げは10倍以上に増えた。プロ野球の世界ですら選手に報いている。Yankeesに移籍した田中投手は7年間の報酬$1.55億(当時約155億円)。一方は消費電力削減に大いに役立つ技術の開発、他方は夢・希望・感動を人々に与える仕事だが、夢・希望・感動だけが正当に評価されてはいないか。
 
中村氏の個人的能力、独創的な発想で会社は莫大な利益を得たのだから、相当の対価を払うのが社会正義であろう。200憶円が高すぎても、2万円は安すぎるように思う。