アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

無戸籍者問題

日本人が我が国で暮らすためには戸籍が必要だが、不思議なことに戸籍のない人がいる。母親が何らかの事情で、子の出生届を出せないためだ。戸籍がなければ住民票の作成に問題が生じる。住民票がなければ自動車の運転免許証や国民健康保険証を取得できず、銀行口座の開設、携帯電話利用契約や不動産の賃貸借契約等ができない。選挙権は認められず、就職も難しい。義務教育を受けるのもすんなりといかない。
 
無国籍者支援団体によると、毎年約3000人が無戸籍となり、うち約500人が長期化して、総数は現在1万人を超すという。法務省は実態調査で、全国に少なくとも200人いると公表している。)無国籍になる最大の要因は民法772条「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。婚姻の解消の日から300以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」
 
要するに、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子とするから、前夫のDV等で前夫から逃れて別の地で暮らす妻は、離婚手続きもできないまま年月がたつ。その間に知り合った男性とは、重婚になるため、正式に婚姻届が出せない。できた子の出生届を出せば前夫の子と戸籍登録される。それに納得いかない母親が子の出生届を出さないのだ。
 
先月、32才にして初めて無戸籍を解消する判決を得た女性がいる。彼女の母親は元夫の暴力を受け、1980年東京に移り、1981年、そこで知り合った男性との間に生まれた人だ。母が元夫と正式に離婚できたのは1984年。妻が妊娠した時は夫の子と推定する民法の規定があり、戸籍上の父親は元夫となるため、出生届を出さなかった。母の元夫と父子関係がないと裁判で認めてもらった。(神戸家裁判平26.9.18
 
今月、無戸籍だった30才の大阪の女性も同様の判決を得て、生れて初めて戸籍が作られる。彼女の母は1971年に前夫と結婚したが、前夫の暴力が原因で約5年後に大阪へ逃げてきた。正式に離婚できぬまま大阪で男性と事実婚1984年件の女性が生まれた。しかし、出生届を出すと戸籍上は前夫の子になるため、役所へ届けずに無戸籍のまま育てられた。戸籍がないから、正社員として就職できず、アルバイトを転々とした。結婚して今は、9才と7才の二人の子供がいる。2011年に病死した実父との親子関係の確認(死後認知)を求めた訴訟で、大阪家裁は女性の訴えを認める判決を言い渡した。大阪家裁判平26.10.10)夫の戸籍に二人の子供は入っているが自分だけが入っていなかった。これでようやく家族4人が同じ戸籍に入ることができる。
 
民法ができたのは116年前の明治時代、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子とする第772条に、制度疲労が起こっていることは間違いない。無戸籍児支援団体は民法改正を求めている。本来、子の福祉のためにあるはずの300日規定のはずが、家族の在り方が多様化した現在、実態に即していない。DNA鑑定でも親子関係が分かるのだから、そろそろ民法改正すべきだろう。