アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

旅客機爆買い後の米中関係

先月下旬習近平国家主席)訪米の手土産として、中国の複数の大手リース企業が、ボーイング旅客機300を購入する大型契約に調印した。Boeing 737 主体として総額2兆円くらいの買い物と思われるが、超大口バイヤーにもかかわらず習近平の受けた冷遇は、米国の対中不信感と失望を反映していると思われる。
 
習近平オバマ大統領による会談で、合意に至った事項はほとんどない。両国は相互に理解することができない関係であることを認めたようなものだ。当然のことながら、米中首脳会談後の共同声明は出すことができなかった。習近平20136月、Californiaで行われた第一回習近平オバマ首脳会談において、米中という二大国が実質的に世界を支配しようという「新たな大国関係」のをオバマに提案していた。新たな大国関係とは、米中二大国が世界を牽引していく時代(G2時代)になったのだから、これからは、太平洋の東側(米大陸と欧州)は、米国が責任を持って管理し、太平洋の西側(東アジア)は、中国が責任を持って管理することにしようではないかというもの。
 
新たな大国関係をオバマ大統領が認めてくれれば、中国は南シナ海埋立地に軍事施設を作ろうと滑走路を造ろうと、自由に好き勝手なことができる。しかし、オバマ共産党一党独裁の中国の指導者の提案には乗らなかった。7月には、米連邦政府職員ら2,000万人の個人情報が、サイバーテロに遭って流出した。米国防総省は、これを中国人民解放軍の仕業と断定、直ちに中国政府のITシステムに対して報復のサイバー攻撃を行ったところだった。
 
サイバーテロに関して、両首脳は、相互の理解に達するとともに、両政府が経済スパイを行なわないことで一致、具体的にはサイバー問題を協議する専門家グループを創設し、サイバー犯罪対策を協議するハイレベル会合を年内までに開き、その後も年2回開催することで合意したと発表した。しかし、米国が昨年、米企業へのサイバー攻撃に関与したとして起訴した中国人民解放軍の当局者5人を米国に引き渡せという要求は、習近平が拒否している。これではいくらハイレベル会合を定期的に何度開催しても実効性はない。今回合意したハイレベル会合は、魂を入れない仏像を作ることに合意したに等しい。もともと中国は、知的財産というものを国を挙げて否定しているように見える。ハイレベルと言いながら、中国側は大した権限のないメンバーを出すつもりなのだろう。
 
二週間前に大筋合意に達した日米加豪墨など12カ国によるTPPは、経済規模3,000兆円超の最大の経済規模を誇る。これは全世界経済の4割に相当するから、習近平にとっては最も恐れる中国包囲網だ。大筋合意発表当日、オバマは旅客機爆買いの恩も忘れ、「中国ではなく、我々が世界経済のルールを作る」と、誇らしげに語った。共産圏中国のGDP4割は国有企業の売り上げであり、7%ほどの驚異的経済成長がいくら続いても、所詮fair playではない。しかも世界第二位の経済大国とはいえ一人当たりGDPでは、米国の1/5以下だ。共産党政権を批判する知識人を未だに弾圧し続ける習近平に、人権問題を解消するよう求めたオバマには、「見解の相違」を理由に拒否、共産党一党独裁政権維持を百年の計のごとく唱える中国と米国の仲は、所詮水と油だ。