アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

拝金主義になり下がった大英帝国

従来、英中の間には深い人権問題があった。中国はチベットウイグルでの人権弾圧を恒常的に行っており、中国政府に歯向かう者は出て行けとばかりに容赦なく暴力を振るう。北方領土を勝手に占拠して、命が惜しい者は北海道に帰れというようなものだ。しかし、チベットウイグルから、自力で他国に逃れることのできるカネとコネのある者は一握りだ。大多数は奴隷のような生活を強いられている。我慢できない者の中に、焼身自殺とか自爆テロをする者がいる。もちろん、チベットウイグルの独立を叫ぶ者がいれば、当局は即座に捕まえて自由を奪う。命まで奪われた者は数知れない。
 
つい3年ほど前まで英Cameron首相(49才)はこの中国の人権政策を批判してきた。首相は20125月には、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談し、中国の反発を食らっている。当時は、中国の人権問題を重視する首相の戦略アドヴァイザー、Steve Hiltonの忠告に従っていたが、その後Steve Hiltonが米Stanford大学に移ると、財務大臣George Osborneの忠告を聞き入れるようになった。Osborneは、英国が強くなるためには経済を強くしなければならない、そのためには外から資金を呼び込むしかない、今、その資金を供給できるのは唯一中国だと、人権問題にふたをするよう勧めた。昨年、香港で民主化を訴えるデモが長期間続いたが、Cameronは直接中国を批判することを控えた。南シナ海岩礁埋め立てについても直接中国を非難していない。IMFに対抗しようと中国が立ち上げたAIIBアジアインフラ投資銀行)にもいち早く参加表明し、中国を全面的に支援してきた。もちろん、日米などは中国主導の金融制度など信用できず、参加していない。(習近平サイバー攻撃をやめるとObamaに約束した翌日に米企業が攻撃された)
 
この功績もあり、今月19-23日、英国を公式訪問した習近平Cameronに対するご褒美に総額7.4兆円(£400億)の投資案件を持参した。London-Birmingham間の高速鉄道など鉄道高速化に3兆円、原発設備建設に1.1兆円、そのほか、宇宙開発事業に投資するなど、英国の経済を充分刺激する大規模外資の導入になる。同時に、中国にとって、先進国英国で自国の技術が認められたと宣伝する絶好の機会になる。London-Birmingham間、現在80分かかっているが、完成後は50分に短縮される。合計3か所で建設する原発事業では、仏電力公社(EDF)と共同ではあるが、先進国で中国製の原発が初めて建設されると宣伝する。中国にとっては、発展途上国から先進国の仲間入りの実績つくりに絶好の機会だ。
 
英国は中国元の国際化にも協力する。中国人民銀行中央銀行)は、今回、ロンドンで中国元建て中央銀行手形50億元(約950億円)を発行する。もちろん、ヨーロッパで中国元建て手形の発行は史上初である。中国元はユーロ、米ドル、ポンドに次ぐ国際的通貨だと宣伝できる。中国マネーを頼りにインフラ整備を行いたいイギリスと、中国元を国際金融界に認めさせるきっかけにしたい中国の思惑とが一致した。中国にお金を求めて求愛しているCameronに対し、英紙女性記者は疑問を提起した。「英国民が、民主的でもなく、透明性が足りず、人権について極めて憂慮すべき態度を取っている国との、通商拡大を歓迎して本当によいのか。」モラルよりカネということか。