OXFAMという世界から貧困をなくす運動をしている国際協力団体の発表によれば、世界の格差社会の原因は一部の超富裕層による富の独占であると言う。現在、世界の長者番付トップ62人の富($1.76兆≒190兆円)が、世界人口の経済力下位半分36億人の富の合計と同じだ。世界の人口の半分の人が持つ財産の全てと、二階建てバスの乗客62人が持っている財産が同額ということだ。
富の格差は、誰も予期しなかったペースで拡大し続け、世界の不平等の傾向は加速中だ。2010年から2015年にかけて上記トップ62人の富は$1.22兆→$1.76兆に増えたのに対し、同期間に下位半分の富は$2.98兆→$1.76兆に減っている。(2010年、上位388人の富が、下位半分の富と同額の$2.98兆であった。)資本主義は、能力があり運もある者が沢山稼いで、それなりに税金を納めることで社会が成り立つという前提になっている。ところが、世界的企業は税金がほとんどかからない国に本社を移して納税義務を免れ、富裕層は租税回避地に財産を移して、居住国での納税を免れている。
国際的な汚職や犯罪を調査報道する、国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative Journalists= ICIJ)が今回発表した、いわゆる「パナマ文書」(The Panama Papers)は、単なる世界の富裕層だけでなく、多数の現職国家元首、元国家元首などが租税回避地を利用して納税義務を免れ、巨額の富を蓄積している事実を暴露した。この漏れた重要機密情報の出所はMossack Fonsecaというパナマに本社がある「国際法律事務所」、Mossack とFonsecaの二人で始めた会社だが、今では世界37支店を有し、従業員は600人を超える。
Mossack Fonsecaは、租税回避地を利用して外国人が財産を隠す手伝いを専門的に行っているので、世界の富裕層・金融関係者なら誰でも知る有名な法律事務所だそうだ。支店の場所をきけばほとんどが租税回避地であることがわかる。英領Virgin諸島、British Anguilla、Bahama諸島、Man島、Jersey諸島、Gibraltar、Malta、Liechtenstein、Seychelles、Samoa、Hong Kong、Singapore...... Mossack Fonsecaの機密文書1,150万通が漏れたのは約1年前、ICIJのジャーナリストたちが膨大な資料の中から世界の国家元首などの租税回避地利用状況の一部を発表した。