米大統領選共和党候補はトランプ（Donald Trump、69才）に決定した。予備選2位Ted Cruz、3位John Kasichの候補者が二人とも撤退したからだ。これで、民主党候補はHillary Clintonになるだろうから、11月の本選挙はHillary対Trumpとなるだろう。選挙のことだから確定的に予測するのはやや危険だが、アメリカ人の常識を信じるなら、史上初の女性大統領が誕生することになるだろう。
なんといってもTrumpは低俗で品がなさすぎる。一度破産したことのあるカジノ王だ。結婚歴三回。政治ど素人というのが国民に新鮮に感じられて受けているともいえるが、思考があまりにも短絡的で幼稚すぎる。彼の父親は不動産開発業者（developer）として財を成した。その息子も不動産で当てて，カジノ、ホテル、ゴルフコース経営にも手を出し、一時期うまくいっていたようだが、その後カジノとホテルは破産している。今は幸運もあって不動産で当たり、自家用飛行機を所有する億万長者（資産額$45億以上、5,000億円）だ。
2005年に彼が始めた商売がトランプ大学（Trump University）という有料教育システムだ。大富豪が不動産であっという間に財を蓄える方法を伝授するという触れ込みで、入学した学生の数は5,000人以上に膨れ上がった。なにせ、1,000万ドル（10億円）以上を毎月稼ぐことだって可能と豪語して学生を勧誘していたのだから、授業料が少々高くても元が取れると錯覚してしまうのだろう。高い授業料も投資の一環と考えた学生も沢山いた。
一回目のセミナーは無料、そこで3日間のトレーニングに参加することが必要と説得されて、授業料$1,495（15万円）を払った学生は、3日間では何も教えてもらえないことに気付き、Gold Elite packageに申し込まなければならないと悟る。3日間のトレーニングでは、特定の金融機関で最高の利用限度額のクレジットカードを申し込むよう指導される。このカードでGold Eliteの授業料$34,995（350万円）を払うと、不動産投資ビジネスを確実に軌道に乗せることができる、それを約束する指導をしてくれると説明を受ける。
ところが、実際は何も教えず、全米最大の不動産データベースサイトZillowにアクセスできるだけ、しかもこれは元々無料のサービスだ。騙されたと気づいた後では授業料の返金に応じない。全米で5,000人以上の元トランプ大学学生による集団訴訟が起こっている。訴額$4,000万（40億円）。個別に戦ったTarla Makaeffさん（女性）は授業料$37,000（370万円）払ったのに何も教えてくれなかったと自分の受けた「授業」をinternet上に公表してTrump大学に返金を求めた。Trumpは名誉棄損だと逆に学生を訴え、$100万（1億円）の支払いを求めた裁判の判決が昨年出た。Trumpが学生に$80万（8,000万円）支払えと言うものだ。
New York裁判所は「大学」の認定も受けていない私企業に「Trump大学」と使ってはならないと命令し、今はTrump大学は、訴訟上でしか存在しない。こんな男が大統領になるとすれば、世も末と思わざるを得ない。
