アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

中国は国連海洋法条約違反の裁定

712日、Hague国連仲裁裁判所は、南シナ海のほとんどを網羅する勝手な「九段線」の主張を、法的根拠がないと、最終判断を下した。止まるところを知らない中国の海洋進出に、これで歯止めをかけることができると期待される。中国が、領海(12海里≒22km)、排他的経済水域EEZ200海里≒370km)、大陸棚(基本的に200海里)等をたてに、南シナ海のほぼすべてが中国に属すると主張してきたが、国連仲裁裁判所に否定された。
 
国連海洋法においては、一見島であっても、高潮で水没する低潮高地には、領海も排他的経済水域も大陸棚も認められない。岩には領海だけが認められ、排他的経済水域や大陸棚は認められない。中国が実効支配する南沙諸島Spratly Islands)の陸地・岩礁について、国連仲裁裁判所は、すべて岩又は低潮高地であって、島ではないと裁定した。国連海洋法条約で、島とは「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」と定義され(第1211項)、しかも、人間が居住できなかったり、独自の経済的生活を維持できないものは島ではなく「岩」とみなされる(第1213項)。もちろん、中国が建設した人工島は「自然に形成された陸地」ではないので、領海も排他的経済水域も大陸棚も一切認められない。

2012年、フィリピンの排他的経済水域内で操業していたフィリピンの漁師が、同じく中国の領土だと主張する岩礁Scarborough Reef)の排他的経済水域内で活動する中国漁船と争い、両国の海軍が出動して衝突する事件があったのを機に、フィリピンは両国でもめているScarborough Reef排他的経済水域や大陸棚の問題を国連仲裁裁判所に訴えた。その裁定が今月12日に出て、大方の予想通り、中国の全面的敗北となった。

裁定は、中国が実効支配する各礁を含め、南沙諸島岩礁はすべて「島」ではなく、200海里の排他的経済水域のない「岩」と、高潮時には水没して12海里の領海も発生しない「低潮高地」と認定した。更に、中国側が歴史的に明らかと一方的に主張していた「九段線」の主張を、何ら法的根拠がないと退けたから、フィリピンの全面的勝訴だ。

 もちろん人工島は国連海洋法の「島」に該当しないので、領海も認められず、昨年来、米駆逐艦が人工島の12海里内を通過したことに対し中国が厳重に抗議したが、領海が認められないことがはっきりした以上、どこの駆逐艦12海里内を通過しても、国際法上何ら問題がないと証明されたようなものだ。


南シナ海は中国の「核心的利益」であると中国は公言しており、世界の貿易額550-600兆円の貨物が通過する海上交通の要所(sea lane)であれば、ここを自国で抑えることは中国にとって世界を支配する入り口になるところだった。果たして、中国は今後、どのような対抗策を考えてくるのか、九段線で紛争状態にあるVietnam, Malaysia, Indonesiaがまとめて国連仲裁裁判所に提訴すれば、ますます中国は孤立することになり、国際社会から締め出されることになるだろう。