アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

受難の横綱稀勢の里優勝に感動

あり得ないことが起こった。大相撲大阪場所13日目、横綱日馬富士戦で初黒星を喫した新横綱稀勢の里は、連勝を止められただけでなく、転落した土俵下で、右手で左胸を抑えたまま動けなくなったのだ。大男がうめき声をあげて必死に痛みをこらえたというから、ただ事ではない。支度部屋で診察した医師によれば、横綱は「動かない。痛みがあって動かすのが怖い。」と話したとのこと。左腕を三角巾で釣った無言の横綱は救急車で病院に向かった。医療専門家の目には、これだけの大怪我なら、来場所の出場も不可能な程度だったという。
 
14日目、当然休場かと思いきや、121敗の稀勢の里は、横綱の責任感からか強行出場を決めた。対戦相手は横綱鶴竜、全く力が入らず、試合が始まって一瞬で寄り切られてしまった。けが人相手の相撲に、鶴竜は「こんなにやりにくいものはない。昨日の時点で休むと思っていた。」と言っていたぐらい気を遣ったそうだ。その昔(16年前)、横綱武蔵丸が、右膝の半月板を損傷した横綱貴乃花と千秋楽結びの一番で対戦した時、けが人相手にこんなにやりにくい試合はないと言ったそうだが、正しく歴史が繰り返されたようだ。
 
普通に考えれば、新横綱の将来を考慮して千秋楽を休場すべき状態のはずが、責任感の強い稀勢の里は昨日の千秋楽を休場できなかった。122敗の彼が休場すれば、唯一131敗の大関照ノ富士が不戦勝で優勝してしまうからだ。自分が優勝を逃すのがもったいないという発想ではなく、せっかく千秋楽の対戦を楽しみにしている観客に申し訳ないという気持ちから、強行出場したのだろう。
 
千秋楽結びの一番、稀勢の里が優勝するためには、目の前の照ノ富士に、優勝決定戦を含め、二回連続して勝たなければならない。もちろん、勝ってほしいとは願っていたが、本割で勝つのはあり得ないと思っていたら、その後の優勝決定戦でも怪我人稀勢の里が勝ったのだ。あり得ないと思うことが現実に起こって目を疑った。気迫で相撲が取れるのだ!優勝の後で男の涙を見るのも新鮮な感動だった。稀勢の里関、感動をありがとう!
 
半月板を損傷した横綱貴乃花は、横綱武蔵丸132敗同士の優勝決定戦に臨んだ。武蔵丸にとって、また、やりにくい試合だが、けが人に情けをかけて力を抜くわけにもいかない。しかし、貴乃花は、今度は、ない力が出てきたのかなんと武蔵丸を上手投げで豪快に下したのだった。時の総理大臣小泉純一郎が「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!」と内閣総理大臣杯を渡す時に最大限の祝福をしたのが印象的だった。しかし、この時無理したのが原因で、貴乃花は続く10場所のうち8場所を全休、ついに引退することになった。無理は一度だけきくのかもしれないが、いくら大相撲力士といえど、やはり無理にも限度がある。稀勢の里は、今回の無理が悪影響出ないように、これから充分療養して、必要なら来場所全休で構わないから、怪我を完治させ、元の体に戻して、大相撲に完全に復帰してもらいたいものだ。