アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

53年ぶりの平和的武装解除

1964年以来、53年にわたってコロンビアで活躍してきた最大の左翼ゲリラ武装集団FARC (Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia、コロンビア武力革命団)が、昨年コロンビア政府側と結んだ和平協議に基づき、先週(627日)、国連監視のもと、武装解除に応じ、7,000丁の銃器を国連監視団に供出した。一部のFARC支配地域の治安維持のため、まだ700丁の銃器が残っているが、これも今月末をもってすべて国連監視団に引き渡す。
 
FARCは、設立当初、大土地所有制度に反対する農民の武装集団だったが、ブルジョワ支配層のみを代表する議会・政府に対して力で対抗するため、理論武装して、共産主義武装集団に変貌した。2000年頃には2万人程の戦闘員を誇り、コロンビアの1/3を支配する、いわばISISのような存在だった(現在は約7,000人)。非合法集団なので、コカイン栽培・取引、要人誘拐による身代金などを主な収入源とし、この間、FARCにより死亡した者22万人以上、国内避難民600万人以上を出したという。
 

627日の武器引渡し記念式典で、FARC側最高司令官Rodrigo Londoño58才)が演説した。"Adiós a lasarmas, adiós a la guerra, bienvenida la paz"武器よさらば、争いよさらば、平和よこんにちは)そして、「我々は二度と政治に武器を持ち込まない」と誓った。一方の政府側代表は、昨年のノーベル平和賞受賞者Juan Manuel Santos大統領(66才)だ。同大統領は、式典で、国民に団結を呼びかけ、武装解除を「ここ50年で最も喜ばしいニュースだ」と歓迎した。和平協定に基づき、FARCには今後、政治活動が認められ、今後2回の国政選挙で上下両院各5議席ずつ与えられる。今後のコロンビアは、武器による解決ではなく、言葉によりすべての問題を解決することになる。

 
FARC構成員約7,000名のゲリラ戦士は、これから社会復帰に向けて技能を習得したり学校に行ったりと、普通の国民になる。FARCと政府側との合意内容は主に5点:農地改革(農地の分配とコカイン転作)、FARC の政治参加(今後2回の国政選挙でFARCに合計10議席を割り当てる)、非合法麻薬生産・取引からの撤退、地雷の共同撤去作業、それに武力抗争被害者への賠償(補償)である。Santos大統領はノーベル平和賞の賞金約1億円全額を内戦犠牲者の補償に充当すると国民に約束したが、当然、必要資金のほんの一部にしかならない。
 
 しかし、歴代の大統領がなしえなかった偉業をSantos大統領が実現した陰には、やはりノーベル平和賞の影響が大きいと思う。イスラエルパレスチナの問題も、コロンビア・FARC問題以上に複雑怪奇であり、過去にはイスラエルPeres大統領とパレスチナArafat代表が1994ノーベル平和賞を共同受賞して、和平実現かと期待した時期もあったが、翌1995年、イスラエルRabin首相が暗殺されると和平は遠のき、いまだに解決の糸口も見つからない状態だ。いがみ合う当事者を仲介する者も大変な仕事だが、今回はSantos大統領が積極的に動いて、FARCを体制の中に組み入れるとしたのが恒久和平に結び付いたのではないかと思う。