英国は昨年6月23日、EUに残留すべきか離脱すべきかの国民投票を実施して、51.9%の賛成多数でEU離脱を選択した(ことになっている)。反対票は48.1%。投票数は約3,350万票であり、65万人が反対票を投じたらその結果は逆になっていた。事前の予測では、賛成多数はあり得ないとなっていたが、実は、投票日4日ほど前から、ロシアのネット工作専門業者(bots = web robots)が偽アカウントの twitter を使って、膨大な数のEU離脱賛成意見を投稿していたことが判明した。
これらのネット工作専門業者(別名「荒らし工場」)は、ロシア政府との関係が指摘されているロシアの企業で、当然、大統領プーチンの意向(又は命令)を反映した活動をしていたのだが、自国に有利な国際状況を作り出すために、米国大統領選挙を操作したり、英国のEU離脱をそそのかしたりして、他国の政治に積極的に介入してきたことが暴露された。
当時の英国首相David Cameronは、ロシアのクリミア半島強奪、ウクライナ侵攻の報復として、EUによる強烈な経済制裁をロシアに課すよう主張していたのであり、経済制裁は原油価格の低迷していた当時のロシアにとってダブルパンチの締め付け効果をもたらしていた。少なくともEUからCameronがいなくなれば、EUはそれほど強硬に対ロシア制裁をしないだろうとの期待から、EUと英国を引き離すことに大きな期待を抱いたいたことは間違いない。
EUの実態は、英国だけが強硬に対ロシア経済制裁を主張していたわけではない。PolandもSwedenもかなり強硬だったし、Lithuania、 Latvia、Estoniaなども積極的対露経済制裁主張派だった。しかし、当時のEUの中で、英国は、対露経済制裁推進派の最右翼だったからプーチンににらまれたのだろう。英国の中でもEU離脱派のBoris Johnson(現May内閣の閣僚)などは、対ISでロシアと協力すべきだなどと主張していたので、プーチンも離脱派が勝ってJohnsonなどが英国の代表になれば、ロシアも楽になるだろうと期待していたと容易に想像される。
ロシア、北朝鮮、中国のサイバー攻撃は、一国の命運にも影響を与えるほどの力を持っていることがわかってきた。三国に共通しているのは、国を挙げて国策としてその道の専門家を養成し保護していることだ。北朝鮮に至っては、経済的に苦境に陥っている中、サイバー攻撃のプロ集団がBangladeshの中央銀行から昨年2月90億円ほどの米ドル窃盗に成功している。これだけのあぶく銭が入ってくれば、3-4回くらいロケットを打ち上げることができるのだろう。