アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

競馬ギャンブルのプロ対国税庁

はずれ馬券代は必要経費と認めるか認めないかで最高裁判決が2件出ている。1件目は最判27.3.10。この場合は、大阪の競馬ギャンブルのプロが独自のソフトを開発して、2007年から2009年の3年間に28.7億円を馬券に投資し、その結果、1.4億円の利益を出した。彼はすべての馬券に投資した金額を必要経費として申告し、1.4億円を雑所得として申告した。これに対し、国税庁は、30.1億円の払戻金を得るために投資した当たり馬券代はわずか1.1億円であり、29億円が一時所得だから、6.9億円の税金(無申告加算税を含む)を払えと主張した。
 
確かに、宝くじ、競馬、競輪などのギャンブル収入は所得税法上の一時所得であり、控除が認められる必要経費は当り券購入代金だけだ。外れた分はどうかというと、それは夢を買っているのだから、映画を観て費用を払うようなもので、当たりという対価を得るための原価とはみなしにくい。しかし、大阪の男性は、年収800万円のサラリーマンをやめ、投資額の約105%の配当を確実に得る独自競馬ソフトを開発して、職業として、継続的に営利目的の馬券投資業務をしてきたのだから、馬券に投資して収益を上げ資産運用するのが彼の本職だと主張した。いわばギャンブルソフト開発エンジニアであり、そのソフトを使って実践し、現に収益を上げている。素人のギャンブラーなら1万円投資してゼロかもしれないし1,000万円当たるかもしれない。彼のソフトは1,000万円投資したら確実に1,050万円当たるのだ。
 
最判27.3.10は、競馬の当たりはずれは払戻金の一回性、偶然性に作用されるものだが、彼のソフトはその可能性を排除し確実に利益を生み出す仕組みであるから、全体として継続的営利活動ととらえることができ、従い、すべての馬券の購入代金を必要経費と認める雑所得に相当すると認定した。その結果、3年間の雑所得は1.4億円と判定され、彼の3年間の納税額は5,000万円に確定した。
 
ところが、同じ時期、北海道の競馬ギャンブラーが、そのようなソフトも使わず、レースごとの競争馬のコース適性や枠順、騎手の技術などを入念に研究し、自分の勘で着順を予想、配当金額と予想の確度を組み合わせる独自のノウハウで、2005-2010年の6年間に約72.7億円分の馬券を買い、5.7億円の利益を上げた。平均利益率は7.84%と、大阪の馬券王の実績4.9%の上を行く。
 
またもや国税庁は北海道のギャンブラーに対して、競馬ソフトを使ったわけでもなく、単なる勘に頼ったギャンブルで得た一時所得に、認められる必要経費は当り馬券購入代金だけと異議を申し立て、最判29.12.15の判決になった。結論から言って、当たり馬券ともはずれ馬券とも分かって買っているわけではなく、全体として広く馬券を買っているので、全ての馬券代が必要経費と認められる雑所得であると、ギャンブラーの主張(雑所得)を全面的に認めた。将棋で必ず勝つ中学生もおれば、競馬で必ず勝つ馬券王もいる、人間の才能は無限であると自覚せざるを得ない。