韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、Pyeong Chang冬季五輪(2月9~25日)に北朝鮮を呼び込み、南北合同チームを作ることに命を懸けていた。敵対する国同士が、スポーツとはいえ統一チームでプレーするのは、確かに国際平和に資するものであり、それを機に南北首脳会談にでも進むなら、文大統領が狙うノーベル平和賞に値するのかもしれない。しかし、先輩、故・金大中元大統領が2000年に平壌で金正日との南北首脳会談を実現したことにより、ノーベル平和賞を受賞した時の状況と同じように、文もノーベル平和賞を金で買おうとしているのではないかと思われる。
金大中は、金正日との会談実現のために、少なくとも4億~5億ドル(約440~550億円)の秘密資金を支払ったことが、後に明らかになった。秘密の資金だけに、実際は5億ドル以上であったとも言われており、金大中本人も、秘密資金を支払ったことを認めていて、実際にその資金を提供した韓国財閥・現代グループの関係者は、2004年、有罪判決を受けている。(金大中は韓国で唯一のノーベル賞受賞者でもあり、訴追を免れた)
市民運動家から韓国大統領になった文は、当初、北朝鮮を招待するだけで、金を払ってまで来てもらおうとは考えていなかったようである。ところが、文の呼びかけに応じ、北朝鮮は滞在費など費用はどうするのかと執拗に迫ったようだ。北朝鮮は国連の経済制裁を受けており、韓国が滞在費用などを負担すれば、国連の制裁決議に抵触する。金を出さなければ視察団の派遣も中止すると北朝鮮が脅したものだから、ここで、韓国歴代大統領の伝統の宝刀である秘密資金が活躍する。
なかなか金を出すと言わない文に対して、北朝鮮は「客を招いておきながら、初歩的な礼儀も守らない無礼な行動だ」と非難し始めた。文は、南北合同チームで冬季五輪を成功させ、次に南北首脳会談を実現するという融和政策の信奉者だ。すべての選択肢が机の上にある、などと先制攻撃をちらつかせる米国の立場とは異なる。米国の立場を支持するとする安倍政権とも相容れない。
安倍首相が、当初、冬季五輪欠席と伝えていたにもかかわらず、直前で参加することにしたのは、米国の先制攻撃が実際に起こる場合、在韓邦人の国外脱出に、自衛隊機の乗り入れを認めさせる交渉でもする必要があるからではないかと思われる。G7の首脳が誰一人として冬季五輪に行かないのに、安倍首相一人だけ行く必要もない。やはりPyeong Chang冬季五輪が目的ではなく、他に目的があるのだろう。