アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

一帯一路の甘い汁を拒否した新首相

古代のシルクロードが、中国から中央アジアを通ってローマ帝国まで、ラクダに絹を積んで運んでいた陸路だが、これが習近平の進める現代版シルクロード経済圏構想に進化しつつある。通り道は軒並み発展途上国、中国が道を作ってくれるならありがたいとどこも受け入れる。しかし資金は中国が貸し付けるものでただではない。道を作る労働者は100%中国人で、地元の雇用創出には貢献せず、資材は釘一本まですべて中国から持ってきて地元の経済活性化に一切寄与しない。騙されたと気が付いた時は既に手遅れなのだ。
 
中国は陸路を一帯と呼び、海路を一路と呼ぶ。海のシルクロードも整備して大型船舶が通れるようにする。そのためには中国と欧州・中東・アフリカ地域を結ぶ重要な貿易ルートに位置するスリランカHambantota(ハンバントタ)港を使えるようにする必要があった。Hambantota港整備の費用(約1,100億円)を中国が貸したものの、最高6%にも上る高金利により、スリランカ政府が債務返済に窮し、港を所管する国営企業の株式を中国国有企業に99年間貸与することにしたため、かつてはスリランカの港湾当局の建物だったところに、今は中国国旗が掲げられている。まるで香港を英国に99年貸与した自分の歴史を弱小国(スリランカGDPは中国の1/180)に押し付けているようなものだ。一応、軍事利用はしないと約束しているようだが、中国には約束を守る習慣がない。要するにスリランカは中国の債務の罠に引っかかったのだ。
 
マレーシヤもNajib政権の下で習近平の一帯一路構想の下、中国からの借金でマレー半島高速鉄道計画(SingaporeKuala Lumpur、全長350km2026年開通予定)が実現に向け動き出していたが、今月92才で再登場したMahathir首相はこの計画の白紙撤回を表明した。総工費1.1兆円の事業だが、137億円程の違約金を払ってでも中止するという。そのうえ、Kuala Lumpurからマレー半島を東西で横断して東海岸を最北端の港町まで結ぶ東海岸鉄道計画(East Coast Rail Link、全長680km)も、前Najib首相が中国の借金で昨年8月工事を始めたばかりだが、Mahathir新首相はこの鉄道建設も白紙撤回するつもりだ。
 
東海岸鉄道計画は、中国の一帯一路構想の一環で、米海軍拠点のあるSingaporeを封鎖された場合でも、中国からマレー半島東海岸側に抜ける戦力的優位性があるため、中国がマレーシアに強力に勧めてきた案件だ。当初Najib政権は中国側から総工費8,200億円と説明されていたが、昨年8月に工事が始まると1.5兆円に跳ね上がっており、2024年完成までには2兆円から2.7兆円にふくらむだろうと予測されている。一国の年間歳入が7兆円に満たないのに、鉄道建設だけで2.7兆円の借金(1.1兆を中止する前は3.8兆円)をかかえれば、確実に債務不履行となり、やがて債権者中国の奴隷になるところだった。あやうくスリランカのように債務の罠に引っかかる前に新首相は、国を破滅に導く東海岸鉄道計画の中止を決定する。一帯一路のインフラ建設が始まったミャンマー・ネパール・パキスタンでも計画の延期や中止が相次いでいる。米国系調査会社の報告によれば、一帯一路事業によりスリランカのような運命になりかけている国はフィリピン、カンボジアラオス、タイという。とかく中国の蜂蜜は honey trap といい、用心しなければならない。