アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

九大オーバードクターの死

大学が夏休み中の97日早朝、九州大学で、三階建て校舎の1階で爆発音とともに火災が発生、火元の大学院法学科研究室が全焼、研究室に寝泊まりしていた46才の同大学院卒業生が遺体で見つかった。憲法学の研究者を目指していた男性による自殺目的の放火だったようだ。
 
男性は、経済的に恵まれない家庭に生まれたようで、出身地は関西、15才で中学を卒業と同時に横須賀市陸上自衛隊少年工科学校に進学した。当時の高校進学率は94%。勉強がよくできた彼が高校進学せずに少年自衛隊員になった理由は、少年工科学校に入ると特別国家公務員となり、初任給月額107,600円支給されるからではないかと思われる。彼の同級生の話によれば、全寮制なので、その気になければ三年間で卒業時に300万円くらいの貯金ができたという。(学年が上がれば給料も上がる)
 
彼は、大学を目指していたので、少年工科学校在学のまま、湘南高校通信制課程にも入学し、三年後に通信制課程を卒業して大学受験資格を確保し、自衛隊員を退官している。その後少年自衛隊員時代の貯金を基に受験勉強をしたと思われ、21才又は22才で九州大学法学部に入学している。学部4年間、大学院修士2年間、博士課程3年間の合計少なくとも9年間は奨学金を受けていたと思われ、学籍を離れる頃は、恐らく1,000万円ほどの借金があったと推測される。
 
26才で九大大学院修士課程に入学、憲法学を専攻。その後博士課程に進むも、博士論文は提出せず、恐らく在籍可能期間満了に伴い38才で退学している。退学と同時に奨学金返済の義務が生じるので、専門学校などの非常勤講師をしながら収入を得て借金を返済しつつ、研究室にも出入りしていたようだ。ところが、昨年3月(45才)で雇止めかと思われるが、非常勤講師の仕事もなくなり、6月頃には家賃も払えなくなって10万円ほどの借金をした記録がある。彼の昨年の収入は3月・4月は無給、5月・6月は月額14.5万円、ここから月額4万円の奨学金を返済して、国民年金などの社会保険料を支払うと、4か月で残る収入はたったの9万円、10万円の借金を収入とみなしても生活保護の対象になる。
 
それからは、宅配便の仕分けのアルバイトや肉体労働などのアルバイトで収入を得るも、奨学金の返済をしていては生活が成り立たず、家賃も払えないので、住居を手放して、研究室で寝泊まりしていたという。大学側も彼が研究室で寝泊まりしていることを確認していたが、この研究室を含む人文社会系学部はこの7月から現在の東区のキャンパスから西区のキャンパスに移転が始まっていた。移転が始まると、大学側は彼に研究室から立ち退くよう通告しており、彼は8月、親しい人たちに「事態が悪化しつつある」と伝えていた矢先だった。
 
折角、九大博士課程という超高等教育を受けた日本人が、このように人生を終えなければならなかったのか、人口減少を嘆くだけでなく、もっと活躍の場を提供すべきではなかったか、大学も政府も我々も考えなければならないところに来ていると思う。さもなくば国が自滅するだけだ。