アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

あおり運転致死傷罪



神奈川県の東名高速道路20176月、あおり運転を受けた自動車の夫婦が死亡した事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩(建設作業員、26才)に対し、横浜地裁裁判員裁判)は1214日、懲役18年を言い渡した。男は昨年65日夜、東名下り線のパーキングエリア(事故現場の約1.4km手前)で、静岡市の男性に迷惑駐車を注意されたことに逆上し、時速約100kmで男性一家が乗った車を追い抜き、妨害行為を繰り返し、追い越し車線上に無理やり停車させて追突事故を誘発した。男性と妻は後続のトラックに追突されて死亡、娘2人はケガを負った。
 
過失運転致死傷罪(トラックの運転手)であれば、最高刑は懲役7年となるところ、危険運転致死傷罪となれば最高刑は20年(他の刑罰も加重されると最高30年)となるので、このような危険な男は危険運転致死傷罪が妥当なところだ。元々、検察は懲役23年を求刑したが、判決は懲役18年となった。もちろん裁判員も裁判官もこの男の行為は危険運転致死傷罪に該当すると判断した。
 
ところが、あおり運転が危険運転致死傷罪に該当するとは法律には明記されていない。条文上「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(自動車運転死傷行為処罰法第24号)となっている。男の弁護士が危険運転に該当しないと主張したのは、男は自動車を停止させただけで、夫婦を死亡に至らせたのは後続のトラックであり石橋和歩でないというのだ。夫婦の自動車の前に自分の自動車を停車して、被害者(夫)につかみかかった矢先に別のトラックが偶然衝突事故を起こしたのだから、夫婦の自動車を停車させた行為と夫婦が死亡した結果の間には因果関係がないとの主張だ。
 
トラックがぶつかって夫婦が死亡した時は、男は自動車を運転しておらず、「危険運転」はしていなかったと主張する。自動車を停車させる行為を危険「運転」行為と見るのは条文上無理があり、停車後に第三者が起こした事故に危険運転致死傷罪を当てはめるのは間違っているというのだ。しかし、横浜地裁は、男が4回もあおり運転をして、その後急に停車して夫婦の自動車を追い越し車線に停車させ、そこにトラックが突っ込んで夫婦が亡くなったという、男の一連の妨害行為が最終的に死傷事故を誘発したのだから、男の行為全体を危険運転と見るべきだとの判決を下した。
 
あおり運転は殺人行為同類であり、法律を適用して厳罰で臨むべきだと思う。妨害運転致死傷行為の条文が、このような悪人(の弁護士)にいちゃもんつけられるくらいなら、はっきりと「あおり運転」を危険運転致死傷罪に加えたほうがよい。男の弁護士はあくまでも過失運転致死傷罪で罰せられるべきだと主張して控訴すると思われるが、国費の無駄だ。しかし、その場合、検察も控訴する可能性あり、折角、男が勝ち取った18年の懲役が、最悪、求刑通り23年になるかもしれないので、よく考えた方がいいだろう。遺族は無期懲役を望んでいるのだから。