来年の東京五輪開催が決まった2013年9月7日のBuenos AiresにおけるIOC総会、最後に残った候補地Istambulと東京の決選投票で60:36(無効1)の大差で東京が勝った。しかし、その前には、Madridも含めた3候補地で第一次投票があり、スペインの首都Madridが惜しくも落選した。スペインは1992年Barcelona五輪を開催しているが、首都であるMadridで五輪開催の実績がないので、国王はじめ国を挙げてIOC委員たちに自国の首都を売り込んでいた。しかしスペインは票の買収にあまりお金を使わなかったのだろう。
十数名いるアフリカのIOC委員にとって、3都市のどこでやろうと候補地にアフリカがないので、どこでも構わない。自分の投票権を金に換えることができればその都市でいいと思っている。ここに目を付けて活躍してきたのがSenegal人Lamine Diack(ラミーヌ・ディアック85才)、1999~2015年の長きにわたって国際陸上競技連盟会長をしていた男だ。国際陸連会長に先立つ1973~2003年の間、アフリカ陸連会長もやっていたからアフリカの全てのIOC委員をよく知っていて、絶大な影響力を持っている。彼自身は1950年代、走り幅跳びの選手として1957~1960年の間フランスと西アフリカの記録保持者でもある。その後政界に進出し、Senegal議会下院第一副議長なども経験している。
彼は自分の息子(Papa Massata Diack)を使ってロシアやアフリカ勢のIOC委員の票の取りまとめをしてきて、東京五輪が決まる4年前の2009年IOC総会でも、リオ五輪実現のためブラジル企業から200万ドル(当時のレートで約2.5億円)のコンサルタント費用をせしめ、アフリカ系IOC委員の票を買収したとして、IOC倫理委員会はこれを買収資金の裏金と認め、2016 Rio Olympics組織委員会会長Carlos NuzmanがBrazil連邦警察に逮捕・起訴された(2017.10.5)。
贈賄側がCarlos Nuzman、収賄側がDiack親子である。IOCは、このDiack親子を東京五輪選挙でも暗躍したのではないかと疑い、調査を進めたところ、JOC竹田会長がSingaporeの会社Black Tidingsに200万㌦(約2.2億円)をコンサルタント料として支払ったことが発覚、Black TidingsはDiack息子のお友達の会社だ。一企業が新商品を新市場に販売するため市場開拓にコンサルタント料を払うなら社会通念上あり得ることだが、JOCがコンサル料を払うのは、票の取りまとめの対価とみなされる。