アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

イエス様を超えるシェフ

イタリア・ModenaMilanoFirenzeの間)に住む超有名なイタリア人料理人シェフ、Massimo Bottura56才)は、Michelin三ツ星レストランのオーナーだ。彼の経営するModenaのレストランOsteria Francescana2010年以降連続して「世界のトップ50レストラン」の上位5位以内にランクされている。2015年は2位、2016年は1位、2017年は2位、2018年は1位と、その腕前は世界的な評価を勝ち取っており、今や彼はイタリアでNo. 1のシェフと評価されている。
 
小さい頃から母親、祖母、叔母などの料理を身近で見ていて、料理に興味を持ち、自分で台所に入って料理をしていたというが、兄たちは工学、医学の道に進み、自分は法学の道に進む(父親の希望)と決まっていたので、大学は法学部に入学。でも、どうしても食事の世界で活躍したいとの思いを断ち切れず、24才で大学を中退、Modenaの町で小さなレストランを買収して料理人に転向する。父親からは見放されたが、母親が応援してくれた。教えを請うたフランス人シェフGeorges Coignyの影響も受けて、イタリアの伝統とフランスの芸術を混ぜ合わせた独特のイタリア料理の世界を開拓したのだそうだ。もちろん、モナコ、フランス、英国、米国など世界を渡り歩き、世の中の一流どころの料理がどんなものか自分の目で確かめてきた。
 
学生時代自分が勉強した法学部では、法律で弱者を救済するすべを学びかけた。イタリアどころか世界No. 1のシェフとなった彼は、今度は世界一の料理で、路上生活者など経済弱者の魂を救う活動を始めた。NPO Food for Soul(魂に食事を)という組織を立ち上げ、スーパなどから賞味期限間際の食材を寄付してもらい、パリ市内の世界遺産Madeleine寺院の地下を改装したレストラRefettorioで、一晩80人ほどの貧困層の人たちに、文字通り世界一の料理を味わってもらっている。もちろん食事は無料で、手伝ってくれる料理人も給仕係の人たちもすべてボランティアだ。
 
食を通して社会問題に取り組む活動は、世界各地でfood waste期限切れ直前の食材)を利用する非営利団体の活動として広まっている。貧富の格差が広まるなか、偶然の事故により生活が立ちいかなくなった人たちはたくさんいて、そういう人たちはまともな住む場所もなく、ましてや一流のレストランの食事など望むべくもない。でも、恵まれない人たちといえども自尊心があり、夕食のひと時だけでも昔の良き時代を思い出して世界最高クラスの食事を楽しんで、人間の尊厳を取り戻してもらいたいとBottura氏は願っている。彼がキリスト教徒なのかどうかは知らないが、ここまでくると、現代のイエス・キリストのように思われてならない。正直言って言葉だけで人を救うイエス様よりも、一流の料理までごちそうするシェフの方が本当の意味で救世主と呼ぶにふさわしいのではなかろうか。
 
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