アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

刑事を好きになった女性の結末

先月、冤罪と言われていた湖東記念病院事件の再審が決定、懲役12年の服役を終えた元看護助手の女性(西山美香さん、現在39才)の無罪がようやく確定する。刑事事件では推定無罪といって、刑事に誘導尋問され間違った自白をしたところで、合理的な疑問を残さない程度の検察側の証明が必要なのに、どうして、証拠もなく実際やってもいない殺人事件で懲役12年が確定してしまったのか。発端は、取り調べの刑事のことが好きになって、気に入ってもらおうと思い、刑事の手柄に協力して、どんどん嘘を言ってしまったからという。
 
刑事は口がうまいから、捜査に協力してくれて事件が解決したら自分の実績になるので白状してくれなどと言ったのだろう。当時24才の西山さんは、取り調べの刑事が理想の男性像に近く、その優しさに魅かれ、犯人が見つけられずに困っている彼に協力しようと、嘘の供述を始めたのだそうだ。「(滋賀県)湖東記念病院患者死亡事件」は2003522日に発生、人工呼吸器のチューブが外れて窒息死したとみた滋賀県警は、過失致死事件として西山さんと現場責任者看護士の二人を任意聴取した。しかし決定的な証拠はなく、事件から1年以上たった200476日、西山さんは自分が「呼吸器のチューブを外した」と殺害を自白し、逮捕された。殺人には動機が必要だから、「職場での待遇への不満」と一応供述した。
 
でも、本当はチューブを外したりしていないのだから、供述には矛盾点がたくさん出てくる。その都度刑事は優しく矛盾を修正して、本当の犯人がしたような誘導尋問に持っていき、現場にいた人でなければ語れない迫真性に富む事実を折り混ぜ、立派な供述調書を作成した。患者の心肺停止を最初に見つけた看護士は、2時間ごとに患者の痰の吸引をする義務があったが、午後11時が最後の吸引なのに、痰が詰まって死んだと思いこみ、自分の怠慢を追及されると案じて、「午前3時に吸引した」と看護日誌に嘘を書き、しかも発見した時、患者の呼吸器が外れていたと嘘をついた。
 
西山さんは看護士とは仲が良く、看護士がシングルマザーで逮捕されたら大変なことになると彼女をかばう気持ちもあり、一方の自分は親と同居しているので、これ以上彼女が苦しめられないように助けてあげたいと犯行を自白したともいう。(その看護士は結局退職して、西山さんの弁護団に協力することはなかった)
 
刑事から「殺人罪でも執行猶予で刑務所に入らないでいいこともある」などときかされて嘘の自白をしたのに、裁判では怪しい方向に進み出す。ついに第2回公判から、それまでの供述は嘘だと主張したが、認められなかった。結局12年間、無実の女性が刑務所で服役する結果になった。
 
再審請求に提出された医師の意見書では、不整脈が原因で死亡した(自然死)可能性が高いと指摘されている。好きになった刑事さんの手柄にしてあげようと軽い気持ちで「はい」と言ったらとんでもないことになると知った西山さん、もう二度と刑事には騙されないぞと決心している。