7月25日、地球から72,000kmほどの宇宙空間を、直径約130mの天体が時速86,400km(秒速24km)の速度で通り過ぎた。地球と月の距離は38万km、その距離のわずか1/5しかない場所を通り過ぎたということで大騒ぎになっている。この天体は「2019OK」と名付けられたが、地球のすぐ近くを通り過ぎる前日24日に、地球に衝突する恐れがある天体を監視する研究者団体が見つけたそうだ。月と地球との距離の1/5とはいえ、7.2万kmも離れたところを通過する天体(小惑星、隕石)ごときで大騒ぎすべきことのか、なぜ「ニアミス」だったと専門家が恐れるのか、それには過去の天体衝突の実績があるからだ。
地球のある太陽系の直径は少なくとも約360億km、なぜならば1977年に打ち上げられた米国無人惑星探査機ヴォイジャー1号(Voyager 1)が、2012年地球から178億km(太陽からは約180億km)に到達しており、太陽系の半径は約180億kmと確認できたからだ。太陽系の宇宙の中で見ただけでもこのニアミスの重大度は360億km:7.2万km ≒ 1km:2mmの比率になる。1km離れた地球に投げた野球ボール(手榴弾)が2mmのそばをかすめ通ったというものだ。今回は衝突しなくてやれやれだが、過去には運悪く本当に地球に衝突した天体がたくさんある。
確認されている最大の天体が、2億5100万年前、南極大陸Wilkes Landに衝突した直径50km以上と推測される小惑星で、地上にできたクレーター(crater)は直径約500km、とんでもない衝撃が地球全体に伝わったが、幸い、恐竜はその頃まだこの世にいなかった。直径10km以上の小惑星が地球に衝突した形跡は他にも3件地表に残っている。20億2300万年前、南アフリカVredefortに衝突した天体は、当時直径300kmのcraterを作った(今は地形が侵食されて直径100kmに縮小)。衝撃は広島原爆の58億倍と強烈で、地下25kmまで隕石は到達していた。
18億5000万年前にカナダSudburyに落下した小惑星が残したcraterのサイズは直径200-250kmだし、6600万年前、メキシコ・Yucatan半島に落下・衝突した小惑星の直径は10-15kmで、craterの直径は160km、深さは地下20km。メキシコに衝突した天体の衝撃度は広島原爆の10億倍、震度Magnitude11、津波は300mの高さに到達したという。この天体衝突により、当時、地球上を征服していた恐竜は全滅し、地球上の生物種の75%が死滅した。
1908年シベリア・ツングースカ(Tunguska)に落下した天体は、直径50-60mで、2019OKより小さな小惑星(隕石)だが、地上6-8km上空で爆発、衝撃波は東京都とほぼ同じ面積に広がり、動物はおろか森林・工作物などすべてを破壊した「ツングースカ大爆発」として知られる。直径約130mの2019OKが、ニアミスでなく、地球に衝突・落下していたらとても恐ろしいことになる。我々は恐竜のように滅びたくないという天体観測専門家集団(我が国ではNPO日本Space Guard協会)は、日々、地球の方角に向かって来そうな天体を探しており、充分な時間さえあれば、技術的には天体の飛来方向を変更させるなどの対応ができるそうだ。しかし、2019OKのように直前で発見できても打つ手はなく、運を天に任せるしかないという。