アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

親子二代の国外逃亡犯

 保釈中のCarlos Ghosn逃走劇があたかも映画のようだということで、本当に映画にしようという企画が米国でなされているという。彼は自分の家族について話す時は、母親や祖父母のことしか話さず、父親はビジネスマンだったというだけで、詳細は一切しゃべっていなかったが、L’Obsというフランス新聞の東京特派員Mr. Régis Arnaud(レジー・アルノー)が2月5日発売する「逃亡者(Le fugitif)」という本によれば、Carlos Ghosnの父親Muhammad Ghosn(アラビア語で「ゴスン」、俗名Jorge Ghosn)は、1960年に神父を銃殺した殺人犯で死刑判決を受けた男だ。

 

 ゴーン父はダイヤモンドや麻薬の密輸を生業としており、神父銃殺の3日後に犯人5人が逮捕され、その一人がゴーン父だった。逮捕されたゴーン父は当時37才、その時息子Carlos Ghosnは6才。レバノンの刑務所で模範囚を装っていたら、死刑から禁錮15年に減刑され、1970年に仮出所するが、4カ月後にまた逮捕された。100万ドル以上の偽札を売りさばいたという罪状で再度15年の禁固刑に処された。刑務所に収容されている間に、仲間に、地方検事、予審判事、刑事裁判所長の殺害計画をもちかけていたことが、脱獄に失敗した男らの供述で暴露された。しかし、1975年、チャンス到来、レバノン内戦の混乱に乗じて刑務所から脱出することに成功、彼はブラジルのRio de Janeiroに国外逃亡する。そこで金儲けに成功し、2006年死亡した。(享年83才)

 

 ゴーン父に殺害された神父(ボリス・ムスアド)の生前の恋人は、レバノン歌謡界の大御所Sabah(サバハ、1927-2014)というクリスチャンの女性歌手、アラブの歌姫としてアラブ諸国で知らぬ人はいないというほど有名な人物、日本でいえば美空ひばりのような存在という。2014年に死亡した彼女の自叙伝で、彼女は、自分の元恋人がJorge Ghosnに殺されたボリス神父だと記述している。

 

 親子二代の国外逃亡犯、成功のカギは金と運、親子に共通した要素だ。ゴーン父は刑務所でも金を使い、看守たちを買収していた。息子は今回の日本脱出で国際的犯罪集団に22億円程の金を使い逃亡計画を実施したと報じられている。(日本政府に没収された保釈金15億円、弘中弁護士などに支払った報酬等を含めると、逃亡費用合計約40億円か)Carlos Ghosnは経営者として一度名を成した人物だから、レバノンから出ていろいろ活躍したいだろうが、フランス、ブラジル、米国どこに行こうと、犯罪人引渡し条約があって国際警察経由日本に連れ戻される危険性があるので、身動きは取れないだろう。レバノンから偽名のpassportをもらって出国したところで、国外での行動は極端に制限される。なにせすぐにばれる顔だから。しかも、米国では、証券取引委員会(SEC)から、日産の報酬額を150億円以上過少開示したとして、100万ドルの制裁金を科され、10年間、企業の役員になれないという制限もつけられている。こんな男に見込まれて日産の会計責任者になったGreg Kellyは、Carlos Ghosnの共犯として現在裁判を待つ身分、出国禁止条件付き保釈中だ。有罪となれば最高10年の禁固刑となる。Carlos Ghosnが自分に有利な証人として援護射撃してくれるはずだったが、Ghosn is gone, 奴は二度と日本の裁判所に現れないだろう。今頃Kellyは、司法取引に応じなかったことを後悔しているのではないか。