アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

徳勝龍奇跡の幕内初優勝

 両横綱途中休場の中で幕内優勝となったのは、番付最下位(幕尻)の33才徳勝龍だった。同じ33才でも昨年1月に横綱を引退した稀勢の里もおれば、今場所限りで引退すると発表した大関豪栄道もいる。この業界で33才は若くない。そんな中で、幕内最下位(前頭17枚目)、14勝1敗で優勝して上を目指す力士もいるから相撲は面白い。人生の縮図ともいえる場所がある。

 

 遅咲き徳勝龍は近畿大学4年生(22才)の時に入門、2009年1月場所初土俵、2009年11月場所で幕下に昇進している。2011年11月に十両に昇進してから今場所まで50場所勤め、十両24場所、幕内25場所在位(途中十両から幕下に一場所陥落)している。身長181cm、体重184kgと恵まれた体格ではあるが、肘の故障などがあり、前頭4枚目(2015年5月)が最高位だ。

 

 幕内成績171勝204敗が示すように、幕内に上がっては勝ち越しできず十両に陥落するというのを4回繰り返し、先場所(2019年11月)十両筆頭でかろうじて8勝7敗と勝ち越し、4度目の再入幕に至った。幕内力士41人は23才から35才までいろいろだが、勝ち越していなければ残れない厳しい環境なので、齢を重ねてなお幕内に残るのは大変なことだと思う。両横綱鶴竜白鵬)共に34才、今回負け越して大関の重責から逃れるため引退を決意したという豪栄道は33才だ。

 

 そうしてみると、最後まで優勝を争った正代(前頭4枚目、13勝2敗)は徳勝龍より5才若く28才、冷静に考えて、優勝決定戦になったら正代に分があるだろうとみていたが、千秋楽結びの一番で33才の徳勝龍が23才の大関貴景勝に勝ち、14勝1敗、堂々と幕内初優勝だ。この一番に勝てば優勝、負ければ優勝決定戦というのは大変な重圧で、精神的にも強くないとまずは負けるものだが、その重圧に勝って初優勝とはすばらしい。恐らく本人は優勝をさほど意識せず、目の前の10才年下の若者なぞに負けてたまるかという気概で臨んだのがよかったのだと思う(本人は優勝をメチャ意識していたとインタビューでは言っていたが)。Torino Olympicsのfigure skate金メダルでも、狙っていた実力者二人とも運悪く転び、無心の荒川さんが金を獲得したように、年齢は精神面を強くするのだろう。

 

 それにしても、徳勝龍の優勝で、これだけの大男が土俵上で男泣き、率直な表現をしてくれたのは、非常にすがすがしい出来事だと思う。43回の優勝を重ねた白鵬の態度と比べたら、やはり日本人が横綱になってほしいと願うのは僕だけではないだろう。白鵬は、格闘技で勝ったのだから自分の実力だという自信が態度に出すぎて見苦しい。しかも勝ち方も、プロレスのかち上げという伝統的相撲では使わえれないやり方が多いのも問題だ。それに比べて徳勝龍は相撲道というにふさわしいやり方で戦っており、国籍で差別してはいけないのかもしれないが、やはりこんな力士に相撲界を引っ張っていってほしいと願う。優勝インタビューで、場内の観客みんなに向かって、深々と頭を下げ感謝の気持ちを伝えるのは見ていて気持ちよく、多くの日本人の心をつかんだのではないか。場所中に急逝した近大の伊東監督が一緒に戦ってくれたというのも、日本人の心に響いた言葉だ。まだ33才、今後ともこの業界で頑張ってください。