アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

供述弱者の悲劇、ついに無罪判決

 単にお人好しだった元看護助手の女性(西山美香さん、現在40才)が、担当刑事に惚れて協力したおかげで、殺人などしていないにもかかわらず殺人罪により12年の実刑判決、現に25才から37才までの人生の大事な時間を刑務所で殺人者として暮らす羽目になった。昨年、最高裁で再審が認められ、昨日、大津地裁でやっと無罪判決を勝ち取った。24才で逮捕され今まで16年、殺人者の汚名を着せられて生きてきた女性は、初めて喜びの涙を流したという。

 

 湖東記念病院で2003年5月22日発生した男性患者(当時72才)死亡事件、人工呼吸器のチューブが外れて窒息死したとみた滋賀県警は、過失致死事件として現場責任者看護師の女性と看護助手の西山さん二人を任意聴取した。しかし決定的な証拠はなく、業務上過失ならば責任者は看護師となるところだが、シングルマザーの彼女は、子供の生活を案じて、患者の心肺停止を最初に見つけた自分に責任はないとするため、看護日誌を改ざんした。看護師には2時間ごとに、患者の痰の吸引をする義務があって、午後11時が最後なのに、「午前3時に吸引した」と看護日誌に嘘を書いた。痰が詰まって死んだと思い込み、怠慢を問われると案じた看護師が事情聴取で咄嗟に「呼吸器が外れていた」と嘘をついた(でも外れた時になるべきアラームをきいた人は一人もいなかった)。警察は呼吸器のチューブを外した犯人を探さなければならない。

 

 この看護師と仲の良かった西山さんは、友人を守ろうとして、事件から1年以上経った2004年7月6日、自分が「呼吸器のチューブを外した」と警察に説明し、逮捕された。仲のいい友人が、警察の任意聴取でいつまでも苦しんでいるのを見るに忍びなかったのだ。自分は正看護師ではないし、親と暮らしているからと軽く考えたという。しかし、看護助手だった西山さんに呼吸器操作の資格はなく、実のところ止める仕組みも知らなかった。高校卒業後、別の病院で働いた後、この病院に移って半年でこの「事件」が起きたのだった。

 

 西山さんは自分でも認めているが軽い発達障害がある。親しい友達をかばってあげたいという気持ちと、なんとか犯人を特定して業務上の実績を上げたいという刑事(西山さんの好みの男性)に迎合して、刑事が作る矛盾だらけの供述調書に署名した。刑事と一人の気の弱い若者では知識の量が格段に違い、彼女は簡単に言いくるめられた。「殺人罪でも執行猶予で刑務所に入らないでいいこともある」などと説明されて嘘の自白をしたのに、公判が始まるとあらぬ方向に進み出した。ついに第2回公判から、それまでの供述は嘘だと主張したが、遅すぎた。結局25才から37才までの12年間、刑務所で服役させられた。

 

 検察は、当社から存在した自然死の可能性を指摘する医師の鑑定書を隠し、事件に仕立ててついに犯人も特定した。検察がこの証拠を開示しなかったため、無実の市民が12年間服役させられたが、今回この鑑定書が開示され、西山さんの無罪が確定した。大西直樹裁判長(49才)は、捜査手続き、刑事司法のあり方が問題であったと指摘し、間違った判決を下した自分たち裁判官が大いに反省しなければならないと戒めた。