アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

安楽死は合法化すべき

 京都の女性(51才)安楽死幇助の罪で、医者二人が逮捕された事件が報道されているが、安楽死が合法となっている国ではこの医者の行為は犯罪ではない。安楽死を希望した女性は、7年来、神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っていて、在宅で療養していた。ALSを発症する前はテニスに夢中になるなど活発な人物だったというが、最近は胃ろうからの栄養摂取をせざるを得ない状態になり、回復の見込みもないまま早く人生を終わらせたいと思うようになったという。

 

 身体的に健康な人であれば自殺をすることもあろうが、ままならぬ体で四六時中ヘルパーさんがついてくれていては、自殺をするすべもない。スイスでは外国人でも安楽死が認められているというテレビ番組を観て、安楽死にあこがれるようになったようだ。世界で最も早く安楽死が公認された国はオランダ、1993年のこと、但し、自国民に限るという条件付き。治る見込みがない難病などの人は、12才以上安楽死が認められる。但し、17才までの若者は両親の同意が必要。18才からは自分一人が決断すればよい。その後、2001年には安楽死を刑法の適用除外とする法律ができた。

 

 オランダの安楽死容認の条件は、28項目あり、患者が不治の病であること、耐えがたい苦痛があること、患者本人が繰り返し安楽死を要請していること等細部にわたって決められており、医学専門家が判断するので、単なる自殺(一般人が勝手に決断を下す)よりも合理的ともいえる。最近の統計では、全死亡者に占める安楽死者の割合は4%~4.5%(年間6,000人前後)、1/3は80才以上の老人という。基本的には不治の病の範疇に入る人が90%以上らしい。日本の自殺者(年間2万人前後)の全死亡者に対する割合は1.5%に相当するので、これと比べるとオランダの安楽死自殺者の割合がなぜか多いように思う。

 

 キリスト教国であるオランダで、一種の自殺である安楽死が認められるというのは、神の摂理に反しているのではないかとも思われる。命は神から授かったものであり、自分で勝手に処分することは、キリスト教の教理に反するはずだ。しかし、個人主義を徹底すれば、自分の運命は自分で切り開くものであり、自分で終了させることも許されることになる。人生の最後まで神に支配される必要はないとも主張できる。キリスト教者でない者にとって、自分の命を勝手に処分することは、両親を始めご先祖様に申し訳ないということになるのだろうか。日本で安楽死合法化が議論されるときの拠り所は、先祖代々受け継いだ命を自分の代で早めに終わらせるのは、人間の社会そのものを冒涜するものだということかもしれない。

 

 しかし、自殺した者は既にこの世にいないから、刑法で処罰できず、道徳的罰を与えることもできない。自殺を手助けした医師は、刑法第202条による嘱託殺人罪で懲役刑になる。英語ではPAS = Physician-assisted suicide(医師による自殺幇助)といって、あくまでも「自殺」の一種という扱いだが、日本の刑法では「殺人罪」(自殺させた、又は殺した)となる。今回の女性も、生前に尊厳死宣言の公正証書を残していれば、安楽死を手伝った医師が無罪になる可能性もあると思う。我が国で安楽死が合法化されるまでは、尊厳死宣言を使って自己決定するしかないのかもしれない。