アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

スペイン前国王ほぼ罪人

 2012年4月、母国スペインが経済危機のさなか、アフリカ南部ボツワナの王族関係者の招きで、当時の国王ファン・カルロス(Juan Carlos)は、「優雅な」象狩りで豪遊中に転んで股関節を折り、旅行を切り上げてprivate jetで急遽帰国、Madridの病院で手術を受ける羽目になった。このお忍び旅行には、デンマーク人女性実業家(Corinna zu Sayn-Wittgenstein、当時48才、夫とは離婚)が同伴しており、怒ったSofia女王が病院の夫に面会に行ったのは、入院3日後だった。Juan Carlosは、長年、野生動物保護を掲げる国際的NGO世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature = WWF)スペイン支部の名誉総裁の地位にいたにも拘わらず、この旅行で、死んだゾウの横でライフルを持って撮った写真などが公表され、WWFスペイン支部名誉総裁は解任された。

 

 この象狩り旅行が契機となって2014年6月、76才で国王を退任、息子のFelipeに王位を譲り、自分は「名誉国王」になる。ところが、この名誉国王は、女王のほかに愛人がたくさんいることが昔から知られており、僕がスペインに駐在していた1990年代、国王がBarcelonaに来る時はいつもMallorca島に住む女性と逢引きしていたと言われていた。現にBotafumeiroという海鮮レストランには、Juan Carlosが女王Sofiaでない別の女性と一緒に写っていた写真が飾られており、国王の愛人として広く知られていた。英国の新聞(2017年8月)にも前国王のMallorca島でのvacationとして、Marta Gayaと一緒にいる写真が出ている。

 

 Juan Carlosは本年6月からスペイン・スイス両方の裁判所から賄賂・資金洗浄の罪で事情聴取を受けている最中だ。この追求から逃れるためか、彼は先週、現国王である息子Felipeに置き手紙を残してアラブ首長国連邦UAE)に従者4名を連れて亡命した。首都Abu Dhabiの高級ホテルEmirates Palaceの1フロア(1泊$1万≒106万円)を借りている。彼はスペインから年間19.4万ユーロ(約2,400万円)の生活費を受け取っている身分なので、生活費に事欠くことはないが、愛人にお小遣いを渡すための財源が必要で、今問題になっているのは、Saudi Arabiaの高速鉄道工事(2011年、総額€67億≒8,400億円)をスペインの事業者が受注する過程で、国王に$1億(106億円)の口銭をSaudi Arabia王家からJuan Carlosのスイスの口座に支払われたというものだ。

 

 Juan Carlosは各国の王家からスペイン企業が受注するたびに、口銭を受け取る仕組みを作っていて、スイスの口座にはとんでもない金額が入金される。バーレン(Bahrain)国王から受け取った$190万(2億円)を現金でスイスに運んだこともある。Juan Carlosは、CorinnaとMartaに夫々€1億(125億円)贈与したことが確認されている。スペイン政府も国民も新型コロナで経済的打撃を受けている中で、このような愛人に貢ぐことが名誉国王に許される行為か。2014年6月までは国王としてスペイン国内では免責特権を有しているが、それ以降の分についてはその特権はない。しかもスイスは、そもそも外国の国王に免責特権を認めていない。前国王の犯罪が、やがてスイスの裁判所を中心に暴かれるであろうが、なんとも破廉恥な「国王」がいたものだ。彼は自分のスイスの財産は息子のFelipe国王に相続させると公言していたが、Felipeはその財産は相続しないと宣言した。スペインでは、もう君主制を廃止して共和制にすべきだという議論も始まっているという。ギロチンにかけられる前に国外亡命は、Juan Carlosにとって正しい選択なのだろう。