アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

婚外子から王女に

 ベルギーで、前国王の隠し子(婚外子)だった女性が、今月から王室の一員として、正式に称号を使えるようになった。Her Royal Highness Delphine of Belgiumというのが、この新しい王女に与えられた称号だ。「デルフィーヌ妃殿下」となるのだろう。父(前国王Albert 2世)が愛人に産ませた女性がDelphineさん(52才)で、現国王Philippe(60才)の妹に当たる。

 

 1968年生まれのDelphineさんは、当時のベルギー国王(Baudouin)の弟Albertと不倫の交際相手の女性との間の子だが、Albertは認知をしていなかった。1993年、国王Baudouinが心不全で急死したため、突然、弟のAlbertに国王の座が回ってきた。Albert 2世として国王になった弟は、国王だから一切の不訴追特権があり、認知請求があっても無視することができる。2012年6月、Delphineさんからベルギーの裁判所に、国王に対する認知請求の訴状が届いた。しかし、国王の免責特権に阻まれて、裁判所は動かない。ところが、国王Albert 2世は自分の健康問題から、翌2013年生前退位して、息子Philippeに国王の座を譲ったので、免責特権がなくなった。

 

 裁判所は、免責特権を失った元国王Albertを召喚するも、頑なに認知を拒否したので、ついに2018年10月、DNA鑑定を受けるよう命令した。それでも動かない元国王に、裁判所は昨年5月、DNA鑑定を受けるまで、一日当たり€5,000(約62万円)の罰金をDelphineさんに支払えと命じたため、しぶしぶDNA鑑定を受けるに至り、ようやくDelphineさんとの親子関係が正式に認められた。ベルギー国王の財産は1,000~2,000億円と言われているから、年間2.2~2.3億円の罰金を30年間払い続けても破産しないだろうが、あまりにも体裁悪いので認知したのだろう。

 

 Delphineさんは、18才の時に、母親から、あなたの父親はAlbert王子だときかされていて、現に国王になったAlbert 2世とは33才の頃まで電話で話をする中だったという。ところが、国王に隠し子がいるというのは具合悪いとなったようで、それ以降、電話連絡もつかなくなり、絶好の状態になっていた。「なぜ私は捨てられたのか、説明して欲しい」と訴えた彼女は、ついに裁判で正義を勝ち取った。今は、彫刻家として英国で活躍している女性は、本当は王女だったのだ。アメリカ人男性と結婚して二人の子供もいる。

 

 王女Delphineには相続権もあるから、父・元国王が死んだら遺産も相続できる。前国王は、この裁判で、罰金に加えて€340万(約4.2億円)の裁判費用を払う羽目になり、人間としての評価はガタ落ちだ。スペインの元国王Juan Carlosも、妻のSofia王妃をMadridに残したまま今年8月、アラブ首長国連邦UAE)に亡命した。フランスBourbon家の末裔であるJuan Carlosは、昔から女癖が悪く、スイスの秘密口座にためた多額の貯金を愛人に贈与するなど、スペインでの評判はすこぶる悪い。こんな国王はいらないと王制廃止を主張する人はCatalunya州に特に多い。タイでも、多数の愛人をかくまっている現国王に対し、現在、若者中心に王制改革の大規模デモが行われている。この種の国王がはびこると、歴史は繰り返されて、どこかで第二のフランス革命が起こるのかもしれない。