アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

飼犬には飼主の命を救う習性がある?

  先月16日(火曜)早朝、カナダOttawa市で犬(名前はClover)と散歩中の女性が突然心臓発作を起こし、道端に倒れてしまった。体重50kgほどの犬(sheepdog種、1才半、女の子、立ち上がれば飼主の肩くらいに届く)が、突然道端で倒れ動かなくなった飼主を見て、とっさに緊急事態と判断し、飼主が握っていたリードを力ずくで飼主の手から放し、道路中ほどに立ちふさがった。そこに通りがかったトラックの運転手(Dryden Oatway 、21才)が、犬に進路を妨害され、トラックを止めて降りてみると、犬が、倒れた飼主の方に合図した。運転手は、倒れている女性を救助すべく、近くを歩いていた通行人と協力して救急車を呼び、女性は救命処置のおかげで命が助かった。

 

 写真から想像される女性(Ms. Haley Moore)は20代か30代、彼女の家族に緊急事態を知らせなければならないと、この犬はその後自宅まで走り、大声で狂ったように吠えながらドアをノックした。何事かと外に出た両親(Diane & Randall Moore)が急いで犬の後をついていくと、救急車の中で救急隊員の治療を受けている娘の姿があった。犬、トラック運転手、通行人(Danielle Pilon)の連係プレーのおかげで娘は幸運にも一命をとりとめた。Cloverは、飼主Haleyとは姉妹と思って慕っているようで、世にも珍しい人命救助犬の実話が、カナダでは大きなニュースになっている。

 

 よく似た実話が日本にもあった。2016年4月26日18:30頃、千葉市稲毛区宮野木地先で、「徘徊している犬を保護した」と、通行人から110番通報があり、宮野木交番の警官(当時50才)が駆け付けた。犬のリードをつかむと、その犬は、通報者の女性らとともに警官をどこかに案内するかのように引っ張ったため、彼らは犬が案内するままついていった。100mほどついていくと、犬は民家の玄関でお座りした。警官が窓に近づいてみると、家の中からうめき声がきこえたので、窓から中を確認すると、ベッドにもたれかかるように倒れている飼主(横島敏雄さん、当時68才)を発見した。

 

 緊急連絡を受けた救急隊が処置を施し、骨折していた飼主は市内の病院に入院し、その後回復したとのこと。警官を自宅に案内し、飼主の緊急事態を知らせた犬(雑種、女の子)は、8年前に千葉ポートタワーの近くで拾われたのだという。お手柄犬には千葉北署長からご褒美のドッグフードが贈られたという。

 

 実は、このような、犬が苦しんでいる飼主を救おうとする行為は、訓練を受けなくても習性として備わっているという米国Arizona State大学の研究チームの研究結果が2020年6月、PLOS ONEというジャーナル(Pet dogs (Canis lupus familiaris) release their trapped and distressed owners: Individual variation and evidence of emotional contagion (plos.org))に発表されている。犬60匹とその飼主60人を対象に実験したもので、飼主が大きな箱に入って「助けて!」と叫ぶ場合と静かに読書をしている場合を比較し、飼犬が飼主に緊急事態発生と判断した場合は、蓋の衝立を無理にこじ開けて飼主を助け出そうとする行動をとるのだそうだ。犬の習性とはいえ立派なものだと感心する。