アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

米ネズミ講の帝王獄死

 先週14日、米国の刑務所で一人の男が病死した。ねずみ講で世界136か国、65,000人以上を騙して7兆円($650億)もの金を集めた元投資家兼詐欺師だ。名前はBernard Madoff(バーナード・メイドフ)。大学を卒業するや否や、Bernard Madoff Investment Securities(証券投資会社)を設立、創業者社長として、しばらくは実績も上げ、業界では高利回りの配当をする有能な投資家とみなされてきた。New York在住の富豪たちは、彼にお金を預けると高配当が得られるというので、Madoffにはどんどん資金が集まった。

 

 最初は、投資が順調にいっていて、大手証券投資会社並みの配当を払うことができたようだが、規模を大きくしようと思うと、預かる資産を増やさなければならない。他の同業者よりも多くの資金を集めるには、同業者よりも高配当を約束しなければならず、それなりに研究して何とか高配当の原資ををねん出していたようだ。しかし、同業者にもプロ中のプロがそろっており、Madoffだけが神か予言者のようにいつも当たるとは限らない。資金を集めるには高配当が必要、ならば、新規に調達した投資資金を配当に回すと高配当の約束を果たしたことになり、翌年はもっと多くの資金を預けてくれる。こうして、集めた資金を約束の高配当に回し始めたのは、1980年代半ば頃からという。その頃から、Madoffの株・証券・債権等の運用は行き詰っていた。

 

 年間10%もの高配当を約束する夢のような投資話がいつまでも続くのはありえないが、彼はせっせと毎年彼に投資する資金を増やさせ、同時に約束の高配当を実行したから、全米の富豪たちはMadoffにお金を預ければ増やしてくれると、益々資金を預けるようになった。Madoffにしてみれば、当年の配当額相当分以上の新規投資があれば配当を払うことができるので、大富豪たちから新規の投資金を集めては、その金を原資に高配当を続ける。

 

 運悪く、2007年頃には、アメリカでは、住宅購入用途向けのsubprime loanが不良債権化して、富豪投資家たちもsubprime loanの焦げ付きから償還(払い戻し)を求めることが多くなり、新規投資額がなくなるばかりか、償還に応じなければならない事態になった。その時、既に預かった金はほとんどなく、2008年、ついに彼は二人の息子(Madoff証券投資会社役員)に、自分たちのやっているのはPonzi schemeというねずみ講だと打ち明ける。

 

 2009年、New York – Manhattan連邦地裁で投資詐欺罪(Ponzi scheme)により禁錮150年を言い渡されたMadoffは、7兆円ほどの預かり資金があったはずなのに、実際は20億円ほどの不動産を含め100億円ほどしか持っていなかった。彼の二人の息子は、長男Markが2010年自宅で首つり自殺(46才)、次男Andrewは癌で2014年死亡(48才)。日本の被害者リストには、野村證券あおぞら銀行住友生命保険、三井住友生命明治安田生命あいおい生命保険太陽生命保険、日本興亜損保富国生命保険などがある。しかし、無理もない。世界の大手金融機関が皆騙されたのだから。Royal Bank of Scotland、BNPパリバ、Banco Santander、etc., etc. 夢のような投資話は夢にしか出てこないと我々は知るべきなのだ。