アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

ハイテク強盗

 伝統的な強盗と言えば、留守宅に侵入し財物を盗む者だが、インターネット時代の強盗は、コンピュータウイルスを使って、国や会社のコンピュータに侵入し、誤作動さすとか使えなくさせた上に、情報すべてを抜き取ってしまう。バックアップデータを取っていたとしても、完全に復旧するには膨大な労力と時間がかかるだけでなく、抜き取られた情報が公になると甚大な損害が出る。自社の企業秘密が競合先に渡ることを想像するだけでその重大さが理解できる。

 

 5月7日、米国で発生したロシアのハッカー集団DarkSideが、米最大手燃料輸送管会社Colonial Pipelineに仕掛けたウイルスも、内部情報すべてを盗み出し、このコンピュータを使用できなくしたものだから、8,800kmのパイプラインで一日に3.8億リットルを輸送していたガソリンなどが止まってしまい、一般市民は給油所でガソリンの補給ができなくなった。ハッカー集団から、身代金を払えばコンピュータを修復する暗号を送ると脅され、窮地に陥っていたColonial社は、ワラにもすがる思いで、要求されたbitcoin $500万(5.5億円)を払ったのだそうだ。

 

 5月14日には、東芝テックの欧州子会社が、フランス、ベルギーなど4か国で、同じDarkSideハッカー集団のサイバー攻撃を受け、新規ビジネス情報や人事情報などが盗まれたとのこと。身代金を払わなければDark web上に盗んだ情報を載せて、誰でも見ることができるようにすると脅しているらしい。Colonial社は当初、ハッカー集団の要求には一切応じないと発表していたが、裏で支払いの準備をしていたのだ。それほどこの盗賊の技術は進んでいるということだろう。東芝テックが今後どうするのかわからないが、一概に、サイバー攻撃を受けた日本企業の3社に1社は、身代金を払って復旧の暗号を受け取っているという。(但し、要求額を交渉で値切ると、なかなか復旧されないともいう)

 

 2016年2月に北朝鮮の国営ハッカー集団Lazarusがバングラデッシュ中央銀行口座から盗み出した$8,100万(90億円)は、現金の一回の規模としては過去最大だろう。だが、彼らは足のつきにくい仮想通貨の強奪を得意としている。2018年1月、日本の仮想通貨取引所コインチェックを攻撃し、580億円相当の仮想通貨を強奪したのもLazarusだ。2014年には同じく仮想通貨取引所マウントゴックスが470億円の仮想通貨を強奪されている。同様の被害は、スロヴェニア、ドイツ、英国、香港などの仮想通貨取引所でもそれぞれ30~75億円相当の規模で起こっている。これらは大口の一発勝負だが、Lazarusの「日常業務」はインターネット賭博ソフトの開発や販売、賭博サイトの運営だそうで、これらで7,200人の工作員は日銭を稼いでいる。国連の専門家は、国営北朝鮮ハッカー集団の年間収益は$10億(1,100億円)に上ると分析している。

 

 銃ではなくキーボードを使う現代の強盗、金正恩は2013年に「サイバー戦は万能の宝剣だ」と訓示しており、水が高いところから低地に流れるように、金は余っているところから必要とするところに流れてくるものだとうそぶく。DarkSideはロシア国営ではなさそうだが、Lazarusも含めて、西側のハイテク技術者が闇ハイテク悪人集団をやっつける日は、いつになるのだろうか。