アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

スペインも安楽死法施行

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性(当時51才)について、安楽死幇助の罪で、医者二人が逮捕され、現在裁判が進行中だが、15年ほど前、スペインで、不治の病の82才の女性に塩化カリウムを投与して安楽死させた医師がいた。スペインではやっと今年3月に安楽死法が成立・公布され、6月25日施行されたばかりだから、この医師が安楽死を実行した時は、違法行為だった。

 

 医師Marcos Hourmann(現在61才)は、当時、Tarragonaの病院で夜間当直だった。病院に救急車で運ばれてきた患者は、複数の重病を併発していたCarmenという女性、医者は治療に最善を尽くすも、症状は悪化するのみ、患者は「死なせてほしい」と医者に頼むが、医者は打つ手もなく、鎮静剤を投与して落ち着かそうとする。付き添っている娘が、これ以上母親が苦しむのを見ていられないから何とかしてほしいと医者に言うので、やむなく、人道的配慮からHourmann医師は塩化カリウムを投与して、Carmenの命を終わらせた。不治の病の患者に対して、愛をもって接するのが医師の義務だと考えたからだ。

 

 Hourmann医師は、診断書に正直に塩化kaliumで処置したと記録したところ、病院から告訴され、裁判になって懲役10年の判決を受ける。但し、司法取引で有罪と認めたため、1年の懲役刑に減刑され、更に前科がなかったことから実刑も免れた。司法手続きの間、彼はスペインを脱出、英国に逃れ、英国で医師として働いた。2010年、ようやくスペインに戻って医師として活動を再開した。その後二度と安楽死は施していない。

 

 6月からは、Hourmann医師の先の行為は、スペインで合法となった。それまでは安楽死をする「死の医者」とのレッテルを貼られていたが、同じ医者が、以前と同じ行為をしても、今後は合法になる。我が国はまだ安楽死を禁止しており、医者がこれをやると、ALSの女性に安楽死を施した二人の医者と同じく罪に問われる。患者の苦しみ、家族の苦しみを軽減することは認められていない。回復の見込みがない人でも、早く人生を終わらせたいと希望することは認められないというのは、神だろうか、大統領・首相であろうか。

 

 世界で最も早く安楽死が公認された国はオランダ(但し、自国民に限る)。治る見込みがない難病などの人は、12才以上に安楽死が認められる。18才以上なら親の同意もいらない。2001年には、安楽死を刑法の適用除外とする法律もできた。現在、安楽死を合法と認めている国は、オランダの他、スペイン、ベルギー、ルクセンブルグ、スイス、カナダ、オーストラリア、NZ(2021年11月より)、それにアメリカの10州ほど。

 

 自殺は、本人が勝手に死んでしまうため、禁止はできない。安楽死を求める人は、本来なら自殺すれば希望はかなえられるのだが、ALSの患者のように、体が自由に動かず自殺したいと思っても実現できない。82才のCarmenのように、重病過ぎて、自ら命を絶つ力がない人もいる。神から授かった命を自ら断つのは、神の摂理に反しているともいえるが、個人主義からすれば、自分の命を全うするのも、医師の介助で早めに終らせるのも、個人の選択として許されるのではないだろうか。