アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

クレベリンで会社を潰す医者

 コロナで打撃を受けた企業が多い中、「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」する効果があると表示して、除菌用品「クレベリン」を販売していた大阪の製薬会社「大幸薬品」は、景品表示法違反として、6億円余りの課徴金支払いを命じられた。消費者庁に、表示の根拠となる資料の提出を求められたが、密閉された空間でのデータなどは示されたものの、一般的な環境での効果を裏付ける合理的な根拠は示されなかったため、景品表示法の優良誤認表示に当たるとして、措置命令を受け、課徴金としては過去最高額の6億744万円を支払うよう命じられたもの。

 

 不当景品類及び不当表示防止法第4条には、「商品の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れがあると認められるもの」を表示してはならないと規定されている。消費者庁の調査によれば、クレベリンに使われている二酸化塩素のような薬剤を空間に噴霧しても、ウイルスを消毒・除菌する効果を立証する合理的根拠がなく、消費者に誤解を与える表示にあたると断定した。

 

 消費者に優良誤認を与えた理由の多くは、大幸薬品の長年の主力商品である「正露丸」に対する消費者の信頼がある。そのような会社が「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」すると主張する除菌用品クレベリンを売っているのだから、コロナを恐れていた消費者は、藁をもつかもうと、クレベリンに殺到した。コロナの時期、クレベリンを年間200億円ほど売り上げており、調子に乗って設備投資をして一挙増産体制を整えたところで、消費庁から横やりが入った。コロナの前、大幸薬品の株価は600円ほど、それが、2860円まで上がり、消費者庁の措置命令が出て、375円に下がった。時価総額1000億円ほど吹き飛んだ。

 

 3%ほどの大株主、興和は、大幸薬品の会長・柴田仁に、2021年12月期の連結赤字額約96億円の損害賠償を請求する株主代表訴訟善管注意義務違反)を提出した。大幸薬品の社長・柴田高(65才)は元医師(外科医)で、大阪大学大学院の招聘教授、順天堂大学大学院の客員教授を兼任していたため、クレベリンの性能につき、すっかり信用していたのだろう。

 

 昨年末、米国で、仮想通貨交換業大手、FTXが、債務総額$1,100億(15兆円)を抱えて倒産したが、このネズミ講起業家若者(31才)は米名門MITで物理学を専攻したエリート、しかも、彼の両親は二人ともStanford大学の現役法学部教授というから、投資家は皆エリート一家を疑うこともなく大金を投資した。31才のSamは、絶頂期の個人資産$260億(3.6兆円)で全米第41位、世界第60位というから、彼を信用しない方がおかしい。名のある医師でもある、正露丸の会社の社長が勧める除菌用品に、何の効果もないとは、日本の投資家も想像だにしなかったのだろう。消費者・投資家の信用を得るのは時間がかかるが、信用を失うのは一瞬だということを、肝に銘じておく必要がある。