シリアの独裁者Assadが2013年6月13日、反体制派支配地区で化学兵器を使用、150人ほどの住民が死亡した。化学兵器使用は時の米大統領Barack Obamaにとり「超えてはならない一線」(red line)だったが、仏のObamaさんはAssadに対する直接的武力攻撃はせず、シリア反政府軍側に武器を供与することを決断しただけだった。この時も、Assadは、政権側が化学兵器を使用したは認めず、反政府軍側が使用したものだと主張し、Assadの後ろ盾ロシアPutinも政府側が化学兵器を使用した証拠はないと発表した。
Assadはその後、2013年8月21日、首都ダマスカス東部の反体制派支配地区で大規模に化学兵器を使用、1,700人の住民が即死乃至ほぼ即死、数千人単位の住民が神経ガスによるとみられる神経毒症状を発症した事件を引き起こした。またまた、「超えてはならない一線」を超えたので、今度はObama大統領はAssad政権側を攻撃するかと思いきや、ロシアが介入して、Assadを説得、翌2014年半ばまでにすべての化学兵器を廃棄することに合意したことにより、米国の攻撃を回避した。超えてはならない一線を越え、甚大な人的被害を引き起こしたにも拘わらず、武力攻撃を避けて「平和的解決」を追求したObama大統領の「戦略的忍耐」(strategic patience)という。
4年前、米国の攻撃を回避し、その代償に化学兵器を廃棄したはずのAssadは、4月4日、シリア北西部反体制派支配地域で、廃棄されたはずの化学兵器を使って空爆を行い、100人以上の住民が即死、毒ガスによる被害者数百人という事件を引き起こした。Assadは、今回もまた、反政府軍が貯蔵していた化学兵器庫に爆弾が当たっただけだと言い訳をし、ロシアも「Assadの関与はない」とAssadを擁護、化学兵器使用の事実を否定している。
しかし、シリアで活躍するNGO “MSF”(国境なき医師団)報告によれば、反政府支配地域における塩素ガス・神経剤と疑われる物質による空爆は3月25日、3月30日にも行われていて、4月4日の空爆の規模が大きかっただけだ。超えてはならない一線を何度も越えたAssadに対して、Trumpは即座に軍事攻撃を命じた。巡航ミサイルThomahawkから59発のミサイルを発射し、そのうち58発がShayrat空軍基地の航空機・燃料貯蔵庫など重要な軍備施設に命中したと発表されている。
この時点でAssadが化学兵器を使わざるを得なくなった理由は、7年にも及ぶシリア内戦で、いくらロシアの援助を受けても、反政府勢力やISなどのテロ集団に対抗できず、統治能力がなくなった独裁者の最後のあがきと思われる。幸い、大統領就任間もないTrumpは、Assad排除よりもIS排除を優先すると言っていたので、自分が攻撃されることはないと高をくくっていたのだろう。これで、Trumpの次の標的が北朝鮮のならず者若造であることがはっきりした。金正恩は、我々は核兵器を持っているから大丈夫と強がりを言っているようだが、米国の行動の時は確実に近づいているようだ。但し、北朝鮮攻撃の場合は、シリアと違って、反撃される可能性があること。その芽を摘んで完全に打ちのめさなければ、米韓日の被害が甚大になる恐れがある。