我が国の非正規雇用労働者は、今や2,000万人を超える。25年前(1992年)、958万人だったが、2017年末時点で2,036万人に増えた。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などいろんな雇用形態があるが、共通しているのは正規雇用ではないということ。つまり有期労働契約だ。契約が更新されるかわからず、いつ首になるか不安、そのうえ、当然のことながら、無期限の正規労働契約に比べて賃金も安い。雇用者側は、不況の時に備えて、いつでも人件費を削減できる安全弁を持っていた方が経営の自由度が増すし、経営も安定するが、労働者にとって、我が身を機械の部品のように扱われてはたまったものではない。
そこで改正されたのが労働契約法第18条の無期転換5年ルールだ。本年4月1日より、通算5年を超えて有期雇用契約を繰り返した有期契約労働者は、本人が無期雇用への転換を申し込めば、雇用者側は拒否できないとなった。一年契約を4回更新した場合は、5回目は無期限の正規雇用に変更される。推定では、非正規雇用2,036万人のうち約450万人が無期転換対象者という。現在は、有効求人倍率1以上という人手不足時代、人材確保のため多くの企業が非正規雇用を正規雇用に変換している。ユニクログループは1万人以上の非正規社員を正規雇用にした。高島屋、JFront(大丸・松坂屋)、クレディセゾンなど2,000-3,000人単位で正規雇用に格上げし、日本航空、日本生命、スターバックスなどはそれぞれ1,000人程度の正規雇用転換をしたという。将来的に働き手不足という時代が来るのが明白なので、早めに優秀な社員は囲い込む必要があるという事情もあるようだ。三菱UFJ銀行、三越伊勢丹、ジョイフル(外食産業)なども無期転換を進めている。
しかし、改正労働契約法第18条には、雇用主側にとっての抜け道も用意してある。クーリング制度というもので、通算5年の契約満了後に一旦解雇して、6か月以上のクーリング期間を挟んで再契約すれば、その後5年間はまた非正規のまま再雇用できる。最初の5年の契約期間はリセットされ、10年半にわたって、内10年間非正規のまま雇用できる。企業がこんなことをしても、クーリング制度に沿った対応をしているだけで、即、労働契約法違反にはならない。合法的雇止めができる。但し、明らかに立法趣旨に反する場合、解雇された労働者の権利が保護される。
労働契約法(平成20年施行)ができる前の東芝柳町工場事件(最判昭49.7.22)では、契約期間2カ月の臨時従業員が5回契約更新した後解雇され、不当だと訴えたところ、最高裁は解雇を無効と判断した。最近では、期間3か月の契約を何度も更新し、結果的に5-12年勤務の後解雇された従業員4名が、解雇は雇止めで不当だと雇用主NTTマ-ケッテイングアクト(従業員2.4万人)を訴えた裁判で、解雇無効、従業員に2,900万円の支払いを命じている(岐阜地判平29.12.25)。