アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

韓国人投資家に1兆円もはめられた金融プロ達

 アルケゴス投資会社(Archegos Capital Management)という聞きなれない会社に、世界の一流金融プロたちが、総額$100億(1.1兆円)を超える被害を被ったというニュースが金融界を襲っている。一番の被害者はCredit Suisseというスイス第二の銀行、損失額 $55億(約6,000億円)、二番目の被害者は日本の野村證券、損失額 $28.5億(約3,077億円)。野村證券はこの3月期で2,200億円を損失処理するとのこと。他の被害者は、米Morgan Stanley $10億(約1,100億円)、スイス最大の銀行UBS $8.6億(約930億円)、三菱UFJ証券 $3億(約330億円)、みずほ証券 $1億(約110億円)など。米銀City GroupやドイツのDeutsch Bankは被害額を査定中。唯一、米Goldman Sachsは真っ先に担保をすべて実行したから、実害は出ない見通し。

 

 アルケゴス投資会社は韓国人投資家Bill Hwang(57才)が2013年に設立した個人の投資会社(family office)だ。米国在住のHwangが、それまでのインサイダー取引などで稼いだ資金をつぎ込んで設立した。インサイダー取引とは、公表されていない情報を基に株式などを売買して利益を得る違法行為で、もちろん禁止されている。彼は、米証券取引委員会にインサイダー取引がばれて、2012年、$4,400万(約50億円)の罰金を払っている。更に、5年間正規の株取引禁止の処分を受けた。

 

 この男はレバレッジ(leverage)とかデリバティブ(derivative)などの特殊な投資方法で財を成した。自分が株の取引ができないとなれば、金融機関などに担保(保証金)を出して特定の株式を買わせるというやり方で、大手金融機関と取引を始める。金融機関は、担保さえ出してくれればこの男の言いなりになる。Baiduなどの中国株、Viacom CBSなどの米国株など10種類以内の株を集中的に買わせて、多い時では1.5兆円程の資金を運用していたという。

 

 だが、3月末にこれらの株が一斉に下がり、金融機関から不足分の追証(担保)提出を求められ状況が一変した。追証が出せないとなった途端、最大の貸し手だったGoldman Sachsが$105億(1.1兆円)の株を一日で市場に売却したものだから、軒並みHwang銘柄が暴落し、すべての取引先金融機関から追証を求められる。レバレッジというテコの原理で数倍の株を買わせていたのだから、追証を出す余裕はない。皆がHwang銘柄を市場で売却して損失を減らそうとするので、株価は限りなく下落する。手じまったところで、野村證券には3,077億円もの損失が出てしまったという。6,000億円もの損失を出したCredit Suisseでは、責任を取る形で多くの役員が辞任した。

 

 それにしても不可解なのは、世界の名だたる大手金融機関とあろうものが、得体のしれない韓国系の投資家の素性も調べずに、これほどの融資をするとは、浅はかすぎぬかということだ。インサイダー取引という違法行為で名の知れた男が、いくらいい条件で取引をすると言っても、乗るべきではなかった。しかし、金融機関も四半期ごと、半期ごとに定められた予算以上の利益を出さなければならず、うさん臭い人物の話でもおいしいと思えば乗ってしまう。Hwangは今回、振出しに戻ってゼロから始めるだろうし、野村證券などはもっと儲かる話を求めて動き始めているのだろう。