アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

イタリアの夏休み

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1980年代のイタリアは経済的に国家破綻のがけっぷちにあり、当時イギリスかアメリカの新聞で「貧しいイタリアには金持ちがたくさんいる。(Italy is a poor country full of rich people. )」という記事を読んだことがある。20%という高失業率のもとで、運よく職についている人だって、高インフレ下で生活は大変なはずなのに、優雅に生活し、ヴァカンス を楽しみ、別荘まで持っている。確かに統計上国は貧乏でも、住んでいるイタリア人には豊かな人が多いと思った。8月のミラノでは会社の近くのホテルまで1ヶ月夏休みで閉鎖していた。長期休暇に慣れていない日本人駐在員が、仕事が気になって会社に行ったりすると、イタリア人同僚は「8月にミラノに残っているのは猫と日本人だけだ」なんてバカにしていた。(犬ですらヴァカンスに連れていってもらっている) イタリア人は1ヶ月の夏休みのために残り11ヶ月働くのだと労働の目的が定まっているから、1週間ほどの短い休みをとって鋭気をつけ残りの1年元気に働けるように万全を期すという日本人をみると、夏休みを労働の目的とする自分たちと夏休みを労働の手段とする日本人の違いはあまりにも大きく、議論をしてもかみ合わない。イタリアの学校は夏休み3ヶ月、一方大阪の高校生は約1ヶ月ほどの夏休みが終わってもう二学期が始まる時期になった。しかも日本の高校生でイタリアの高校生のように夏休みだからといって本当に学校の勉強を休んでいる人はどれくらいいるだろう。イタリアから輸入した繊維が日本で色落ちの問題を起こし、日本の染色の技術者にイタリアの工場に来てもらった時のこと、技術者同士で議論している中で日本では常識として使わない組み合わせの薬品をイタリアの工場で長いこと平気で使っていたことが判明した。日本では高校を卒業した技術者なら誰でも知っている組み合わせ禁止の薬品をイタリアの技術者は正々堂々と使っていたので、洗濯堅牢度が悪かったのはこれが原因と突き止めた。しかし、イタリアの技術者はそんな初歩的な知識を持ち合わせておらず、ずっと前からこの組み合わせで色出ししているとのこと。だからイタリアで染める色がこれほど鮮やかでいい色になり、日本の工場で出せない色なのだという結論になった。日本人は常識を持ちすぎて非常識な発想をしないからいい色が出せないと。(洗濯堅牢度のほうが重要なので見た眼の色は二の次になるというのが実態かもしれない) これは非常識のなせる技で、必ずしも非常識=悪=バカともいえない。所詮パーティに来ていく服で何度も洗濯して着るものでもないなら、2-3度の洗濯後色落ちしても消費者は文句を言わず、今着ている服の色が良ければそれでよいという世界がある。一方の日本の小売業界では50回とか100回の洗濯に堪える色でなければクレームが怖くて売らないから特殊な色は出しにくい。イギリスの大手小売店マークスアンドスペンサーもヨーロッパでは一番洗濯堅牢度が厳しいと言われていて、日本と同レベルかそれ以上を要求する。でもコンサートを聴きに行く時に一回だけ着る服とか、一回きりのピアノ発表会に着る服などの需要も日本にだってあるだろうから、その場合は3ヶ月ほどの長い夏休みを取って常識を減らせば日本の技術者にも斬新なアイディアが出てくるかもしれないと思う。日本の高校生もたまには本当の長い休みを取って頭を空っぽにする時間も必要なのではないか。ヴァカンスとは「カラッポ」という意味であり、受験対策の集中講座で頭に知識を詰め込むのはその趣旨が違う。日本人が本来の意味のヴァカンスを楽しむ時がきたら、その時こそ日本は先進国になるのかもしれない。