アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

報道の自由から沖縄密約文書廃棄の自由

憲法21条で保障される「表現の自由」の判例を勉強する際に必ず出てくるのが「外務省機密漏洩事件」(別名「西山記者事件」)。1972年の沖縄返還協定において、その前年1971年、当時毎日新聞記者(外務省担当)であった西山太吉氏(82才、当時40才)が、外務省女性事務官から「米側が地権者に支払う土地現状復旧費用400万㌦(当時のレートで約12億円)を日本政府が米国に秘密裏に支払う」という外務省極秘電文のコピーを入手し、すっぱ抜いた事件だ。
 
日米間の合意文書では、「返還される米軍施設の原状回復費は米側が負担」となっていたが、25年後に米国が公文書を機密解除し公表したところによれば、日本は米国に合計18700万㌦(約  561億円に相当)を提供するという密約が存在したことが確認された。時の総理大臣佐藤栄作は日本人のみならず世界をだまして、平和主義者を装い、ノーベル平和賞1974)を獲得したのだ。沖縄を金で買い戻しただけなら、ノーベル賞とはならなかっただろう。将来、北方四島をロシアから無償で返還させることができる総理大臣が現れたならば、ノーベル平和賞に大いに近づくこと間違いない。
 
ところで、報道の自由と西山氏による取材の自由について、外務省の女性職員と仲良くなり極秘文書を入手した行為は、正当な取材活動を逸脱し違法(最決昭53.5.31)と最高裁で判断され、西山氏は懲役4月、執行猶予1年の刑が確定、新聞社は退社し、郷里で家業を継いだ。歴代自民党政権は、2009年まで、極秘密約文書の存在自体を否定し続けて来たが、民主党政権になって初めて(20103月)、密約文書調査委員会が設置され、当該密約が存在していたことを認めるに至った。
 
その西山氏側が、情報公開法に基づき、当該外交文書の情報公開を外務省と財務省に求めたところ、存在しないと否定されたので、裁判所に提訴した。20104月、東京地裁は文書開示と損害賠償を命じた(原告勝訴)。しかし、20119月、東京高裁は、当該外交文書が廃棄されるなどして、不開示決定の時点で文書が存在しなかったとし、文書開示と損害賠償を認めない逆転判決を下した。そして、今月14日、最高裁は、密約の存在は認めたものの、廃棄されてしまった文書は存在せず、従い開示できないと結論づけ、上告を棄却した(最判26.7.14)。要するに、政権に都合の悪い情報は、廃棄してしまえば公開しなくてもいいということが確定したのだ。
 
かくして、昨年12月成立・公布された特定秘密保護法の運用が問題になる。政府にとって都合の悪い文書は廃棄しなければならなかったが、今後は廃棄せずとも「特定秘密」と称して、正々堂々と、未来永劫国民の目から隠すことができる。聖人君子のような為政者ならば大して問題にならないところが、私利私欲の塊である「政治家」が好き放題情報操作できる時代になったということだ。