アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

てんかんと運転免許

1年前の栃木県でてんかん患者の運転するクレーン車が集団登校中の小学生15人の列に突っ込み、児童6人死亡、9人が重軽傷を負う事故があったばかりだが、先週は京都市内でてんかん患者の運転する自動車が歩行者を次々にはね、千葉・埼玉の観光客も含め7人死亡、オーストラリア人を含む11人が重軽傷を負う事故が発生した。運転者はその後電柱に激突、死亡した。2002年道路交通法改正によりてんかん患者に運転免許取得の道が開けるようになったが、法律改正には正負の二面性がある。運転者の発作・急病による交通事故は昨年1年間で254件発生、このうち、てんかんによる事故は73件で、その5件が死亡事故だった。過去2年以内に発作がないなど医師の診断書を提示すると欠格事由から外れるが、京都の事故のようにそもそも自分がてんかんであると申告しない者は医師の診断書を必要とせず、3月に免許を更新したばかりだった。一般的に「てんかん」は「発作により意識障害をもたらす病気」(道路交通法§90記.蹇砲箸靴瞳膤併?海任△襪、「発作が再発しても意識障害をもたらさない」程度のてんかん道路交通法施行令§33-2-3境 砲版Г瓩蕕譴譴亰膤併?海砲覆蕕覆ぁしかし本人がてんかんであることを警察に告げずに免許を更新しても罰則はないし、死亡事故を起こしても危険運転致死罪(最高刑懲役20年、併合加重の場合は最高30年)は適用されない。現にクレーン車を運転して児童6人を殺害した男(事故当時26才)には自動車運転過失致死罪(最高刑懲役7年)が適用され、宇都宮地判平24.1.5は懲役7年の判決を出した。これでは犠牲者の遺族が納得いかないと17万人の署名を集めて法務大臣に再度の法改正を求めていた矢先の事故だった。てんかんを申告せずに運転免許の取得・更新できなくすることと、てんかん発作による事故に危険運転致死傷罪を適用すべきというものだ。米国50州のうち10州では日本のように「過去2年以内に発作がない」と具体的期間を設けず、担当医師の診断書を基に当局が個別に判断するからか、てんかんによる交通事故はかなり少ないという。栃木県クレーン車の運転手も、今回の京都市の運転手も担当の医師からは絶対に運転するなと言われていたにも拘らず無視して運転し事故を起こしたことから、我が国も医師の診断書提出を法的義務として、違反には危険運転致死傷罪を適用する方向に進むべきだろう。

参考:危険運転致死傷罪の構成要件4点
酔っ払い運転、 50km/h超の速度違反、 危険な妨害行為、
重大な信号無視(てんかんの持病を有する状態での運転がない)

最近のてんかんによる主な交通事故(発生時、場所、運転者年齢、
被害者数、判決)
(a) 2008年3月、横浜市、45才男、1人死亡、1人負傷、
  横浜地判平21.3.18、禁錮2年8月
(b) 2010年12月、三重県、47才男、2人死亡、1人負傷、
  津地判平23.11.30、禁錮2年10月
(c) 2011年4月、栃木県、26才男、6人死亡、9人負傷、
  宇都宮地判平24.1.5、懲役7年
(d) 2011年4月、島根県、22才女、1人死亡、1人負傷、
  松江地判平23.11.10、禁錮2年
(e) 2011年5月、広島県、38才男、死亡なし、4人負傷、
  松江地判平23.8.8、禁錮1年
(f) 2012年4月、京都市、30才男、7人死亡、11人負傷、運転者死亡