アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

米大手証券会社の哲学

先月米大手証券会社Goldman Sachsの幹部社員Greg Smithが抗議退社をした。Stanford大学を出て12年勤めたが客を食い物にする商売を自分はこれ以上続けることができないとCEO (Lloyd Blankfein) 及び会長(Gary Cohn) に対して辞表を突きつけたのだ。彼が入社した時のGoldman Sachsは顧客のために最善の選択をするという哲学を持っていた。それが今は客を食い物にして自社の利益を上げるのが社内で昇進する唯一の条件になっているとのこと。自分も客の資産を合わすと1兆ドルにもなる資金の運用をしてきたが、顧客にとって最善の選択と自社の利益のための最善の選択はおのずと異なり、自社の利益が少なくても顧客のためになる運用を心掛けてきたという。しかしながら会社からは自社利益を最優先せよと命令され、これ以上ついて行けないとして辞表を出すに至った。Goldman Sachs社内では客のことを「操り人形(muppets)」と呼び、今日1日で客の資金からどれだけの利益をわが社に還流させることができるか(how we can make the most possible money off of our clients)の会議を延々と繰り返すのが耐えられなくなった。長続きする商売はもともと目の前の顧客が儲かってついでに自分も儲けさせてもらうというものだが、Goldman Sachsにおいては上層部で顧客のことを考える者は皆無だという。このままではいずれすべての顧客を失い会社の将来はないとみた。3万人の社員を代表して全米80の有名大学の学生リクルート用ビデオに自分も登場しているが、せっかく入社した会社の実態がこれでは真面目な学生を欺くことにもなり自分が自分を許せないというのだ。実力派の幹部社員一人がやめたところでGoldman Sachsにとって大打撃ではないかもしれないが、彼が残した社会に対するメッセージは143年を誇る同社の幕引きを早める結果をもたらすのではないか。158年続いたあのLehman Brothersが4年前この世から消え去ったように。