アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

今もある「いけにえ」

メキシコ北西部Sonora州で先週、死神への「いけにえ(生贄、human sacrifice)」と称して3人を殺した罪に問われた8人の信者集団が逮捕された。死神教(Santa Muerte)という秘密裏に崇拝するメキシコ特有の古い宗教で、信者は首都Mexico Cityを中心に200万人ほどいるらしい。人間は必ず死ぬ運命にあるから死を「聖なる死」と受け入れて(カトリック教徒がマリア様を崇拝するように)人間の骸骨を崇拝しているようだ。信者には職業柄命の危険の伴う麻薬の密売人や犯罪組織メンバーのほか貧しい人々が多いという。死神教にも宗派がたくさんあり、先週捕まった8人組は比較的新しいカルト教団に属する。主犯格の「司祭」は48才のBaron Lopezという男。2009年、2010年に一人ずつ生きた人間をいけにえにし、先月初旬にもう一人いけにえにしたことが今回の逮捕原因だが犠牲者がこの3人だけという保証はどこにもない。10才の男の子の家族が行方不明として警察に捜索願を出したことから事件が発覚した。彼らは夜間、ろうそくをともして、犠牲者(いけにえ)の首の血管を切って開き、流血して死んで行くのを待つ。容器にその血液を集め、司祭の妻が死神を祭る祭壇に生き血をまくのだという。「いけにえ」の名の殺人は日本における「無理心中」の名の殺人と相通じるものがある。どちらも犠牲になる者を自分(達)の所有物とみており自我の主体である一人の人間と見ていない。自分の大切な初子(ウイゴ)を殺して小さく刻み鍋で焼き「いけにえ」として神に捧げるという習慣は古代エジプトの時代からあったようで、旧約聖書出エジプト記22:29)にも「あなたの初子を私にささげよ」と記載あり、神の祭壇にいけにえを捧げることで神を喜ばせ、神の恩寵にあずかろうとしたことがわかる。しかし、その後生きた人間ではなくscapegoat(身代わりのヤギ)をいけにえとして捧げる方向に歴史は進んだにもかかわらず、今回、生きた人間をいけにえとして捧げるカルト教団があるということに世界は驚かされた。ロミオとジュリエットのような相思相愛の二人の愛がこの世で成就しないから来世を信じて「心中」するというなら許されるかもしれないが、親の都合で殺されたくない子どもまで「無理心中」と言われるのは、死にたくない子どもにとって納得いく表現ではないだろう。社会保障が整備された日本で子どもだけでも生き延びる方法はあるのだから、無理心中の主犯は「殺人犯(犯人死亡)」と報道すべきだ。メキシコのいけにえ事件の信者集団は殺人犯として捕まっている。