アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

瀬戸内の脱獄犯

48日、愛媛県今治市の松山刑務所から脱走した平尾タツマ受刑者(27才)が、脱走23日目の430日、広島市内でついに捕まった。広島県尾道市向島に潜伏していると思われていたが、予想に反して、尾道水道向島から本州の尾道市までの約200m)を泳いで渡って本州に入り、電車で広島に来たという。Internet Café平尾受刑者に似た男がいると警察に通報があり、走って逃げるも御用となった。この3週間で動員された捜査員の数は延べ15千人というから、この男を捕まえるのに国がかけた費用は2億円を下らないだろう。プロの窃盗犯だが更に巨額の税金を盗んだようなものだ。
 
昭和の脱獄犯といわれる白鳥由栄(よしえ、19071979年)の4回脱獄に比べると、この若者はまだ1回だけだし、罪状も窃盗程度だから、世間で言われるほどの怪盗ルパン並というのは当たらない。やはり、脱獄2回の実績を誇り、世紀の脱獄犯と言われるメキシコの麻薬王Joaquín Guzmán6163才)は別格だ。現在は米国の刑務所に収容されていてこの9月に裁判が始まる。捕まる前の職業はコカイン密売業。個人資産10億㌦(1,000億円)以上。資金力にものをいわせて刑務所の関係者全員を買収し、自分のために作らせた地下トンネル1.5kmを通って脱獄した。
 
メキシコ政府は、Guzmán国内最高の警備を誇る刑務所に収容していたが、またもや脱獄された。世界最大の麻薬密売組織のボスの市場はメキシコではなく米国だ。麻薬取引には誘拐、殺人、資金洗浄などすべての犯罪が関わり、米国でも500万㌦(5億円)の懸賞金をかけてこの男を追っていた。20161月、メキシコの隠れ家に潜んでいたところを銃撃戦の末生け捕りにされた男は、米国からも犯人引き渡しの要求を受けていたが、脱獄を二度も許したとはいえメキシコにもメンツがあり、刑期が終了するまで出国させないとの方針だった。しかし、一年後の20171月、米国司法省の要請を受け入れ、メキシコ政府は出国を認め、飛行機でNew Yorkに移送された。
 
脱獄の専門家だから米国でも最高の警備を誇る刑務所に収容されているが、何せ相手は億万長者、金の力で何をしでかすかわからず、米国は高額の費用をかけてこの男を拘束しているのだそうだ。逃げられても捜査に金がかかるが、捕まえても金がかかる。米国NY地裁での第一回公判は本年9月に始まる予定だが、裁判も通常以上に費用がかかるものとなる。オウム真理教・浅原の奪還を狙う信者のごとく、親分Guzmánの奪還を目指す麻薬密売組織の手下は無数におり、警備の費用はほぼ大統領並だ。しかも、担当する裁判官の名前が発表されると、裁判開始前迄に裁判官が殺されるのがメキシコの常識だから、米国で裁判官の名前を公表すべきか否か検討されているとのこと。
 
脱獄犯を捕まえるには巨額の捜査費用がかかり、脱獄防止のための費用もかかる。その脱獄犯がGuzmánのような親分になると、奪還に来る部下の心配もしなければならない。裁判が始まったら、今度は司法関係者の身の安全も確保しなければならず、今回の瀬戸内の脱獄犯の場合は、罪状からして捜査費用だけで済みそうだからまだましと思われる。3週間で延べ1.5万人を投入して、安全・安心が戻ってきたのだから結果良しとすべきなのだろう。