アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

絶対に緩まないネジ

大阪の町工場のような小さな会社の作るネジが、世界のハイテクの縁の下の力持ちなのだそうだ。新幹線1編成(16両)当たり約2万本のネジが使われている。最高時速285km100km走ってもそのネジは緩まない。但し、金属疲労もあり得るから、100km走行(東京-新大阪間500kmとして35年)ごとに取り換えている。掘削機などで激しい振動を与えたら緩むのが当たり前のネジだが、それでも絶対に緩まないネジを開発した会社が、東大阪市ハードロック工業、従業員50人ほどの株式会社だ。創業者若林克彦氏(81才)の別名は「ナニワのエジソン」。小さい頃から発明少年、楽に種まきができる「種まき機」、万年筆のインクがいつも一定量になるように工夫した「定量付着インク瓶」、厚焼き卵を手早く作れる「たまご焼き器」などを発明した。
 
大阪工業大学を卒業後、技術者としてバルブの設計に携わったが、28才で脱サラ、緩まないネジを作って、創業3-4年で事業が軌道に乗る。緩まないネジを使うと保守点検作業が要らなくなり、評判が広まって仕事は順調に伸びる。しかし、1件だけ「緩むぞ」クレームをつけてきた客がいた。掘削機などで激しい振動を与えたら、わずかに緩んだという。絶対に緩まないはずではなかったのかと文句を言われた。
 
創業12年、年商15億円になっていた会社の共同経営者は、文句をつける客は1件しかいない、大多数のお客さんは満足しているというので、経営方針が合わず、若林氏はその会社を彼にタダで譲り、数人の社員と自分の作った会社を去って、新たな会社を作った。それがハードロック工業だ。それまでのネジが「緩まないネジ」なら「絶対に緩まないネジ」を作ろうと。1件の客でもクレームをつけてくるのは、技術的に完成していないということ。試行錯誤の末、ボルトとナットの間に楔(くさび)を打ち込むことで、絶対に緩まないネジが完成した。ただ1本ずつ楔を打ち込むと大量生産できないので、上下2層構造のナットにすることを思いつく。世界は広い。各地で類似品、まがい物が出てきても、ハードロック工業の製品と全く同じものはまだ出てこず、絶対に出てこないという自信があるのだそうだ。
 
ジャンボジェット機1機に使われるネジの数は約100万個。ハードロック工業しか供給できない。新幹線に使われるネジばかりか、東京スカイツリー明石海峡大橋スペースシャトル、英・独・台湾などの高速鉄道でも、ハードロック工業のネジがスペックに入っている。高速道路、橋梁、鉄塔、高層建築、車両、造船、工作機械、すべてネジが使われる分野で、ハードロック工業のネジを指定してくる。ナニワのエジソン50件もの特許を持ち、世界一のネジを供給している。