Forbesの発表する世界一の大富豪は2010年3月から2013年3月まで4年連続メキシコの実業家Carlos Slim(73才)であった。2013年3月の時点で彼の総資産は$730億≒7.3兆円、第二位のBill Gates(58才)の総資産$670億≒6.7兆円の上をいく。しかし2013年9月の中間発表では、Carlos Slimの総資産は$700億に減少し、Bill Gatesの総資産が$720億と逆転していた。資産に株式が含まれることから変動するものではあるが、この二人が上位一二位を争うことに疑いはない。しかし、世界最大の小売業Walmart創業者Sam Walton(1918-1992)の相続人4人の総資産合計は2013年3月時点で$1,073億≒11兆円とCarlos SlimやBill Gatesのはるか上をいく。しかも、2013年9月時点では$1,360億≒14兆円に増えている。そして今の時点では約15兆円。
WalmartはSam Waltonが44才の時始めた安売りスーパー、今や世界10,700店舗以上を展開（Sam’s Clubという会員制スーパーも含む）、年商$4,650億≒47兆円の巨大企業だ。1992年、74才で亡くなったSam Waltonには3人の息子と1人の娘がいた。現在の相続人は長男Samuel Robson Walton(70才、Walmart会長)、亡次男の妻Christy Walton(59才)、三男Jim Walton(66才)及び長女Alice Walton(64才)で、それぞれほぼ均等に株式を相続した。「毎日が安売り」（Every Day Low Price）を掲げて貧者の味方と称するも、実態は従業員を冷遇するブラック企業に近い灰色企業だ。儲かるものは何でも売り、全米4,000店のうち1,700-1,800店で銃を販売している。全米で銃の販売実績ダントツ第一位だ。だからObama大統領の銃規制には賛成できない。
従業員220万人のうち1/3はパートタイムで、週28時間を超えて働くことはできない。時給はほぼ最低賃金の$6.00-$7.50だから、最大限働いても月額7-8万円。2/3の正社員にしても同じ時給ベースであり、多くの従業員は週40時間労働でも月額11-12万円。子供のいる家庭でこの収入では、子供の学校給食代が免除になる。つまり、正社員になっても貧困家庭レベルの給料しかもらえないということだ。被雇用者数220万人は連邦政府に次ぐ第二の雇用数だが、この中でまともに生活できる程度の給料（a living wage）を得ている者は正社員の20％程度（30万人）、一方で正社員の40%（60万人）を含む従業員100万人以上が貧困層に属して公的支援を受けているという。1社で100万人超の貧困層を生み出す会社は、地球上他にない。
Walmartは伝統的に労組結成を禁止している。不平・苦情は個別にきいているということで、会社側はこれをOpen door policyと言うのだそうだが、従業員側は本当に不平・苦情を言うとすぐに出口の扉を開けられ、これがOpen door policyの実態だという。現に入社して1年以内にやめていく者は常に70%を超えている。ここには憲法で保障された労働者の団結権もない。年商47兆円の商売で利益を得ているのは創業者の4人の相続人と一握りの幹部役員・社員だけだ。経営幹部の最高位は2月1日付でCEOを解任されるMike Duke(63才)、退職金$1億1,316万≒113億円を手に入れるが、4人が相続したWalmart株50%の時価総額は現在15兆円。Walton 4人の総資産が30兆円に倍増するまでにあと何年と何カ月かかるのか、大いに興味のあるところだ。
