アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

サッカーボール訴訟と親の監督義務

昨日、最高裁は一・二審と逆の無罪判決を出した。20042月、愛媛県の公立小学校の校庭で、当時11才の少年がけったサッカーボールが、グランドの外の道路に飛び出し、バイクに乗った、当時85才の男性が転倒し、約1年半後に死亡した事故が発生した。飛んできたボールを避けようとしたことによりバイクが転倒し、男性が死亡したのだから、サッカーボールと男性の死亡の間には相当因果関係があり、少年の両親は保護者としての監督義務違反を問われた事件だ。
 
少年は、路上でサッカーをしていたのではなく、学校の運動場で、放課後、サッカーゴールに向かってフリーキックの練習をしていたのだが、運悪く、そのボールがゴールを越えて、その先の門扉(高さ1.3m)も越えて路上に出てしまった。事故直後に男性は認知症の症状が出て、その後肺炎で死亡した。男性の遺族は2007年、約5,000万円の損害賠償を求めて提訴した。一・二審は少年の行為に過失があったと認めたうえで、両親が少年の監督義務を怠っていたとして、一審は約1,500万円、二審は約1,100万円の賠償を命じる判決だった。
 
最高裁は、親の監督責任について、「日常行為での予測できない事故に、両親に賠償責任はない」と判断し、賠償請求を棄却した。少年に過失はなく、両親の監督義務違反もなかったという。そもそも、運動場で単に、サッカーゴールに向かってフリーキックの練習をすることが、外の道路を通行する人に危険が及ぶような行為であるとは言えない。また、親権者は、学校にいる子どもを直接的な監視下においているわけではなく、子に対する監督義務を尽くしていなかったと判断するには無理があるというものだ。子どもの行動と老人の死亡の結果について、具体的に予見可能性があったとは認められないから、少年も両親も損害賠償責任を負わないという。


 サッカーゴールの奥のフェンスを、当時の1.2mから2.2m程に高くして、そこにゴールを置くなど、学校側が工夫する余地はある。子どもに、サッカーは人に危害を与えるので禁止というのはばかげているし、そのような場所で子どもがサッカーの練習をしていたせいで、親が多額の損害賠償責任を問われるのも酷な話だ。一方の被害者側は、個人に賠償を請求するよりも、学校に請求するほうが合理的だと思う。公立小学校であれば、最終的には税金で賠償金を出すことになるので、被害者の救済もしやすく、さほど不公平とも思われない。


 それにしても、いつどのような事故で、損害賠償を請求されるかもしれない世の中、万が一のために、個人賠償責任保険に加入しておくののが得策だ。自動車保険や火災保険の特約にして、家族全員で年額1,0002,000円の負担で済む。そうすれば、うっかり自転車で他人にけがをさせたり、間違って店の高価な商品を壊した場合でも、保険で解決できる。お守り保険を持つのは常識だ。