アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

世紀の脱獄犯

711日、メキシコで最も警備の厳しいと言われている刑務所からJoaquín Guzmán5860才、諸説あり)という世界最大の麻薬王がまんまと脱獄に成功した。2回目だ。この男は1993年に麻薬取引などで懲役209か月を言い渡され、服役していたが、それは長すぎるとして、看守から刑務所所長までほぼすべての者(78名)を金で買収し、2001年に第1回目の脱獄に成功している。表向きは、洗濯物を入れる台車の中に隠れて出たことになっているが、実際は刑務所所長はじめ当局との共謀によって、警察幹部に付き添われて外に出たのだそうだ。この時のわいろ総額は250万㌦という。
 
1回目の脱獄から13年間、追われながらも娑婆で過ごしたが、ついに昨年2月、メキシコ軍とアメリカ捜査当局の合同作戦により、自宅にいるところで捕まった。その間、彼の麻薬密売組織Sinaloa CartelSinaloaは彼の出身地名は、競争相手を買収して世界一の規模に成長したから、2009Forbes長者番付(10億㌦超の資産を持つ億万長者)では、世界第701位の大富豪にのし上がった。職業は「コカイン密売業」。当時のメキシコ大統領Felipe Calderónは、五大麻カルテル全滅を目指して軍を総動員、米国の助けも得て、Guzmánの競争相手だった麻薬密売組織の上層部を根こそぎ捕まえたものだから、親分のいなくなったカルテルの中堅どころ以下は、他の職業に就けず、やむなくSinaloa Cartel の傘下に入り、Guzmánの部下になった。(Guzmánが捕まらなかったのは、大統領が彼に買収されているからだとのうわさもあるというが、少々疑わしい)
 
711、2回目の脱獄に、Guzmánは刑務所所長以下関係者ほぼすべての者を巨万の富で買収した。所長も看守も正義のためではなく、生活のために働いている。大富豪囚人から年収の数倍のわいろを受け取れば、彼のためにある程度協力してあげようという気になるものだ。昨年つかまってから1年半で脱獄用の1.5kmのトンネルが完成しており、今回はこの地下トンネル(高さ1.7m、幅80cm、深さは10m)に用意されていたオートバイで逃走したそうだ。娑婆にいるGuzmánの弟が兄貴のために金を用意し、短期間でトンネルも完成させ、刑務所関係者に必要な支払いもしたという。
 
メキシコどころか世界最大の麻薬密売組織SinaloaCartelの主要取引商品は、marijuana, cocaine, heroin, methamphetamineヒロポンなどであり、世界最大の市場は米国だ。シカゴが集積地で、そこから全米に配送される。米国は、麻薬取締局(Drug Enforcement Administration)が麻薬撲滅を目指して、最大の黒幕であるGuzmánの身柄引き渡しをメキシコと交渉してきたが、メキシコにもメンツがあるから、刑期終了までは本国で刑に服させると拒否してきた。しかし、米国が心配していた刑務所丸ごと買収事件が現実となってしまった。メキシコ政府はこの男の逮捕に至る情報提供者に200万㌦の懸賞金を出すと発表し、米国は500万㌦を出すと発表した。総額700万㌦(9億円)の懸賞金の付いた男だが、今回はどれほどの期間逃げることができるだろうか。巷ではAl Capone以上の悪者、Bin Laden以来の大物と言われているのだそうだ。