アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

イタリアの泥棒から得た商売の教訓

昨日イタリアから留学に来た高校生が関空に到着、今日は、これから一年間通う高校に連れて行って、道中いろいろ最近のイタリアの事情を聴いた。イタリアでは18才で運転免許をとれるが、最初の1年間は一切飲酒運転禁止。2年目・3年目になるとグラス一杯くらいのワインは飲んでもよいのだそうだ。免許取得4年目からは一定のアルコール度に至るまでのワインは許されるという。20年前のイタリアでは飲酒運転の規制が一切なかったので、すべて自己責任で判断だった。ある程度飲んだ後でも自分は運転できると思う人は運転できる。無理と思った人だけ運転を辞めればよかった。その後EUの各種の規制がほぼ統一され、ついにイタリアも飲酒運転規制ができたようだ。
 
Milano から Barcelona まで高速道路で丁度1,000km、制限速度は130kmくらいだったから途中で食事休憩をしても自家用車では10時間くらいだ。Milano の倉庫から Barcelona の客の所まで在庫のシャツ約1万枚(72枚入りcarton 140個)をトラックで運送した時のこと、途中フランスの高速の service area で食事から戻った運転手がトラックの中身が半分に減っているのを発見した。トラックを離れて軽く食事をしていた時間は40分程度というから、その間に70箱もの荷物を自分のトラックに積み替えたやつがいたのだ。
 
こんなこともあろうから保険はかけていたが、色やサイズが不ぞろいになったシャツはまともな値段では売れない。でも保険会社は消えてなくなったシャツの代金しか払ってくれず、残りのシャツの価値が下がろうと、知ったことではないという。一番よく売れる size L がほとんど無くなっていたので残ったシャツはジプシーに叩き売るしかない。ジプシーは色・柄・サイズ不ぞろいのシャツでも全部買ってくれるが、当時大体180円前後しか払ってくれないから、商売としては大損する。しかし不揃いのシャツをすべて買い取ってくれる客は他にいない。
 
我らはこの事件から、シャツの販売体制を大幅に変更した。1 carton 72枚の中に4-5色のシャツを入れ、其々の色もそれまでの販売実績に応じて S/M/L/XL 1/3/6/2枚として、これを prepacked(お仕着せアソート)と称し、72枚の carton 単位でしか売らないということにした。これだと、商品の一部が carton 単位で盗難にあっても残りの商品は色もサイズも一応そろったままだから、数量が減るだけで商品価値はほとんど減らない。盗難の危険度の高い国では、商品の梱包の仕方まで工夫がいるのだった。
 
prepacked とした為に、従来から買付けしてくれていた客の一部は失ったが、在庫管理がその代わり非常に楽になり、しかも電話で注文をとる時の時間も短縮されて、仕事の効率はよくなった。20年以上も前のことだから、今のように電子メールで注文が届くわけではない。prepacked にしてから2年後くらいには、お客さんも慣れて、販売数量は prepacked 以前より増えた。押し付けの色・サイズの組み合わせは買えないという小売店もいくらかはあるが、多くはスーパーも含め注文も楽になったと感謝された。振り返ってみるに、泥棒からも教わる教訓はあるものだ。