東京地裁は5月13日、一次定年後再雇用されたトラック運転手の給料を20-30%下げた再雇用条件は無効と、画期的な判決を下した。横浜の運送会社に21-34年間、正社員として勤務した3人は、2014年、60才の定年を迎え、1年契約の嘱託社員として再雇用されたが、嘱託社員の賃金規定が適用され、年収が大幅に下がった。仕事は従来と全く変わらず、給料だけが下げられるのは不当だと会社を訴えた。
労働契約法第20条は、次のように、正社員のような無期雇用で働く人と、再雇用など有期雇用で働く人との間で、不合理な労働条件で差別することを禁じている。
「有期労働契約を締結している労働者の....労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は....職務の内容....その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」
佐々木裁判長は、「定年前と同じ立場で同じ仕事をさせながら、給与水準を下げてコスト圧縮の手段にすることは正当化されない。『特段の事情』がない限り、同じ業務内容にもかかわらず賃金格差を設けることは不合理だ」と、給料を下げたことは違法だと指摘、この運送会社は「再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」から、『特段の事情』はなかったと判断された。一般的に「雇用確保のため企業が賃金を引き下げること自体には合理性があるが、財務状況などから今回はその必要性はない」のだから、差額約400万円を3人に支払えとの判決を出した。
一次定年後も働き続けるため、再雇用される人も多いが、単に正規雇用の機会がなく、やむなく非正規雇用のまま働いている若者も急増し、今や我が国の非正規雇用者数は、昨年末で2,000万人と推計される。正規雇用者約3,300万人を含む全雇用者の38%に相当するから、これは大きな社会問題だ。企業が経済合理性を追求するあまり、派遣労働が極端に増えた現状があると思われる。GDPの6割は個人消費だから、GDPを2割増やして600兆円にするというなら、雇用者の給料を上げなければならない。